Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

シュトゥットガルト:サロメ

2016年01月31日 | 音楽
 シュトゥットガルト歌劇場の今シーズンの新制作「サロメ」。2015年11月22日の初演だ。演出はキリル・セレブレニコフKIRILL SEREBRENNIKOV。プロフィールによると演劇畑の人のようだが、オペラ演出もしている。目立ったところでは、オーストリアの現代作曲家オルガ・ノイヴィルト(1968‐)の「アメリカン・ルル」をベルリンのコーミシェ・オーパーで演出したそうだ。

 会場に入ると、舞台ではすでに演技が始まっている。オフィルビルの広々とした部屋。中央に大きなソファーがある。スーツ姿の男たちが座っている。奥にテレビの大画面。ニュースの映像が刻々と流れている。世界各地で起きる暴動、それを弾圧する治安当局、難民たちの群れ、困惑するメルケル首相等々。男たちはくつろいだ格好で眺めている。

 やがて照明が落ち、そのままオペラが始まる。ヘロデはこの会社の社長、ヘロディアスは社長夫人、サロメはその連れ子だ。部屋の一角には小部屋があり、ヨカナーンが監禁されている。

 ヨカナーンは2人によって演じられる。ヨカナーンの声(歌手)と体(俳優)。声はいうまでもなく朗々と鳴り響くが、俳優が演じるヨカナーンは、男たちになぶられ、暴力を受けて、怯えきっている。見るからに中東の男だ。

 オペラが進行するにつれ、前述のテレビには黒い服を着たイスラム国の男たちが映し出される。浜辺に一列に並んでいる。各人の前にはオレンジ色の服を着た捕虜が跪かせられている。やがて処刑が始まる。首を切り落とされる捕虜たち。

 サロメがヨカナーンの首を求める。ヨカナーンはオレンジ色の服を着せられ、階下の部屋に連れて行かれる。モニターテレビが黒いビニールシートの上で首を切り落とされるヨカナーンを映し出す。妙に生々しい映像だ。

 サロメを歌ったのはグン=ブリット・バークミン。2015年12月のデュトワ/N響の「サロメ」で同役を歌った人だ。でも、今回の印象は少し違った。デュトワ/N響のときは、軽々と遊戯的に歌い、サロメの歌唱パートがどう書かれているかを教えてくれたが、今回はパワーで押したような感じだ。思えばN響のときは、デュトワの指示があったのかもしれない。

 指揮はロランド・クルティッヒ。当歌劇場の指揮者陣の一人だが、少なくともこの公演ではオーケストラを野放図に鳴らし、締まりがないように感じた。
(2016.1.21.シュトゥットガルト歌劇場)
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