Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フェルメールとレンブラント展

2016年03月23日 | 美術
 会期末が近づいてきた「フェルメールとレンブラント」展に行った。本展は会期中無休、しかも平日でも夜8時までやっているので、仕事の都合に合わせて行けるから助かる。

 なんといっても、看板に偽りなく、フェルメールとレンブラントが目玉だ。フェルメールはメトロポリタン美術館からの「水差しを持つ女」(※)。明るくやわらかい光に満たされた室内。ため息が出るほどの繊細さだ。テーブルの上の銀の水差しと水盤は、その光に照らされて金色に見える。水差しを左手に持ち、右手で窓を開ける女は、白いスカーフをかぶっている。スカーフが光を受けて、透き通って見える。

 本作は、フェルメールの中でも、もっとも明るい絵ではないだろうか。室内がこれほど明るく表現された例はないような気がする。本作を見ているうちに、‘考え得るかぎりもっとも上等な絵’という言葉が頭に浮かんだ。

 一方、レンブラントの方は「ベローナ」。ベローナはローマ神話の戦の女神。鋼鉄製の光り輝く鎧と兜、そしてずっしりと重そうな黒い盾、それらの存在感が凄い。レンブラントの力の充溢に圧倒される想いだ。ベローナの温厚そうな顔も、実物を見ると意外な感じはせず、むしろ安定感を醸し出していた。

 「ベローナ」もメトロポリタン美術館からの作品。メトロポリタン美術館には昔行ったことがあるが、2作品とも記憶にない。たぶん見たのだろうが。情けない話だ。

 本展は以上の2点で語り尽くせると、ついうっかり言いたくなるが、もちろんそうではなくて、他の見どころも十分ある。その一例として、カレル・ファブリティウスの2点を挙げたい。レンブラントの弟子で、その才能を評価された逸材だが、デルフト市内の弾薬庫の爆発事故に遭って命を落とした。弱冠32歳だった。

 1点は「帽子と銅よろいをつけた男(自画像)」。前述の爆発事故で落命した年の作品。レンブラントに比べると、光と影の強い対照というよりも、明るい光が勝っている。また、奥行きの深さよりも、浅い空間が捉えられている。鋭敏な感性が感じられるのは、若さのゆえだろうか。

 もう1点は「アブラハム・デ・ポッテルの肖像」。一見なんの変哲もない肖像画だが、画面の右上に打ち込まれた釘が浮き出て見える。トロンプルイユ(だまし絵)を得意にしたというこの画家の署名代わりなのだろうか。思わず微笑んでしまった。
(2016.3.22.森アーツセンターギャラリー)

各作品の画像
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