Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

K.ヤルヴィ/都響

2016年05月19日 | 音楽
 クリスチャン・ヤルヴィ指揮の都響の定期。アルヴォ・ペルト(1935~)2曲とスティーヴ・ライヒ(1936~)2曲というプログラムは斬新だが、2人とも大衆的な人気のある作曲家だし、今や80歳前後の長老格でもあるので、あまり尖った感じはしない。

 1曲目はペルトの「フラトレス」。弦楽オーケストラと打楽器版。弦は16型。出だしは薄く繊細な音で始まったが、9回繰り返される(谷口昭弘氏のプログラムノーツによる)その繰り返しを重ねるごとに、音に厚みが出て、最後はけっこう厚い音に達した。CDや実演で何度か聴いたことがあるが、今までそういう記憶はなかった。

 それにしてもこの曲、初めて聴いたときには、現代にこんなシンプルな曲が作られるのかと衝撃を受けたが、慣れというのは恐ろしいもので、今回はそのシンプルさが物足りなくもあった。曲としてはよいのだが、演奏会場で聴くには、という意味だが。

 2曲目は交響曲第3番。全3楽章からなる演奏時間約24分の大曲だが、ペルトの作風の変化の過度的な作品というだけあって、各パーツがあちこち向いているような、取りとめない感じがした。

 休憩をはさんで3曲目はライヒの「デュエット」。2つのヴァイオリンと弦楽オーケストラのための曲。朝の光がさんさんと射すような明るい曲だ。照度の高さが桁外れ。2つのヴァイオリンが光の粒子のように動き回る。小節ごとに拍子記号が変わるそうだが、一定のビート感が生まれてくるので、のりのよさがある。ヴァイオリンは山本重友と双紙正哉。見事な演奏だった。

 4曲目は「フォー・セクションズ」。フル・オーケストラに2台のピアノと多数の打楽器が加わる大編成で、演奏時間は約25分の大曲だ。委嘱者のマイケル・ティルソン・トーマスには‘管弦楽のための協奏曲’の発想があったそうだ。たしかにその痕跡が感じられる。

 だが、正直な感想を言わせてもらうと、反復音型に魅力の不足を感じた。いつものライヒなら、もっと情感豊かな音型を創造するのではないだろうか。もっともフィナーレにむけての高揚感には、いつものライヒらしさがあって溜飲を下げたが。

 以上2曲のライヒ作品では、クリスチャン・ヤルヴィの指揮に精彩があった。ほんとうにこれらの曲が好きなんだなという感じが伝わってきた。都響の演奏も優秀だった。我が国のメジャー・オーケストラの貫禄だ。
(2016.5.18.サントリーホール)
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