Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

インドの優雅な国々(ミュンヘン)

2016年08月06日 | 音楽
 ラモーの‘オペラ・バレエ’「インドの優雅な国々」は、今まで観る機会がなかったので、楽しみにしていた。事前にウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサンのパリのガルニエでの公演のDVDを観た。たしかに優雅で楽しい作品だと思ったが、正直にいうと、少し退屈した。

 だが、今回のバイエルン国立歌劇場の公演は、それとはまったく違っていた。なにが違うかというと、バレエが、現代的な、動きの激しいダンスになっていた。こうなると、作品の印象がまったく変わった。

 ガルニエ公演は、優雅で、繊細で、ちょっとお色気のある公演だったが、バイエルン国立歌劇場の公演は、ユーモラスで楽しいが、それだけではなく、現代社会を反映したところがあり、フランス・バロックの世界に留まるものではなかった。

 具体的にいうと、序幕の美の女神エベの楽園は、小学校の教室になっていた。エベは先生。生徒たちに愛の尊さを教えている。そこに戦いの女神ベローナ(男の上級生?)が現れ、生徒たちを戦争に駆り立てる。生徒たちはついて行こうとする。慌てて何人かの生徒を引き止めたエベは、生徒を連れて平和を探す旅に出る。

 以下、第1幕から第4幕まで、相互に関連のないオムニバス的なストーリーが展開するが、今回の公演では、所々にエベと生徒たちが登場したり、前の幕の登場人物が後でも登場したりして、緩やかながらも、相互のつながりが図られていた。

 最後の第4幕には難民たちが登場した。ブルーシートのテントを張り、やがてそれを撤収して、あてどのない旅を続ける。そしてフィナーレになると、原作どおり、人々の喜びの踊りになるが、いつの間にか不和が生じ、喧嘩が始まる。喧嘩が収まり、これで終わるかと思ったら、機関銃を構えた男(テロリスト?)が紛れ込み、銃口を人々へ、そして観客へ向ける。ゾッとしたところで幕になる。

 演出・振付はSidi Larbi Cherkaouiという人。大変な才能だと思う。ダンサーの中には日本人もいた。大活躍だ。舞台装置はアンナ・フィーブロック。いつもながら、現代的な感覚の装置だ。

 指揮はアイヴォー・ボルトン。演奏はピリオド楽器のオーケストラ。コンサートマスターはスズキ・シュンスケという日本人。この人も大活躍だった。歌手は、アンナ・プロハスカ以外は知らない人たちだったが、皆さんたいしたものだ。
(2016.7.30.プリンツレゲンテン劇場)
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