Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

サーリアホの室内楽

2016年08月25日 | 音楽
 「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ」の今年のテーマ作曲家はサーリアホ。その室内楽の演奏会があった。

 1曲目はチェロ独奏の「7匹の蝶」。蝶の羽のような、薄く、儚い音で始まる。7曲のミニアチュールの基本はその音だが、時々、軋むような音や、抉るような音が混じる。バッハの朗々としたチェロの響きとは別世界のサーリアホの音。演奏はフィンランドのチェロの名手アンッシ・カルットゥネン。さすがの名演だ。

 以下4曲が演奏されたが、先に演奏者を記すと、カルットゥネンの他に、石川星太郎が率いるアンサンブルシュテルン。石川星太郎は最近その名を見かけるようになったが、1985年生まれで、現在はロベルト・シューマン大学デュッセルドルフに在学中とのこと。アンサンブルシュテルンは石川星太郎が藝大在学中に仲間と結成した(メンバーを固定しない)アンサンブル。

 2曲目はヴァイオリンとピアノのためのデュオ「トカール」。演奏はアンサンブルシュテルンのメンバー(ピアノは石川星太郎)。1曲目の「7匹の蝶」の張り詰めた演奏とは違って、日常風景のような演奏。その落差が大きい。演奏を貶しているのではなく、若いメンバーにはカルットゥネンに学ぶよい機会だろうと思った。

 3曲目はフルート独奏と打楽器、ハープ、ヴァイオリンそしてチェロのための「テレストル(地上の)」。急‐緩の2楽章構成の曲。独奏フルートは声を交えながら演奏する。急の楽章は(いつもの瞑想的なサーリアホとは違って)‘前衛的な’感じがする。

 演奏は、チェロをカルットゥネンが弾いたので、アンサンブルが引き締まった。カルットゥネンは、ソロはいうまでもないが、アンサンブルもうまい。後でプロフィールを見たら、ロンドン・シンフォニエッタの首席チェロ奏者だったことがある。

 休憩後、4曲目はヴァイオリン独奏の「ノクチュルヌ」。この曲だけフランスの若い女性(ノルウェー国立音楽大学に在学中)が弾いたが、なぜこの人が起用されたのか、真意が測りかねた。

 5曲目はチェロ独奏と室内アンサンブルのための「光についてのノート」。チェロ独奏はカルットゥネン。全5楽章からなり、最終楽章では「ついにファ#が光の中心となり、チェロを光輝に満ちた空間へと持ち上げる」(プログラムノート)そうだが、そうは聴こえなかった。室内アンサンブルに粗さがあったからか。
(2016.8.24.サントリーホール小ホール)
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