Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

佐藤紀雄/アンサンブル・ノマド

2016年08月23日 | 音楽
 サントリー芸術財団のサマーフェスティヴァル2016が始まった。初日は佐藤紀雄指揮アンサンブル・ノマドの演奏会。

 1曲目はエベルト・バスケス(1963‐)の「デジャルダン/デ・プレ」(2013)。作曲者名も曲名も初耳だが、プログラム・ノートによると、バスケスはメキシコの作曲家。曲名のデジャルダンはフランスのヴィオラ奏者クリストフ・デジャルダンから、またデ・プレはフランス・ルネサンス期の作曲家ジョスカン・デ・プレから、それぞれとっているとのこと。

 本作は2楽章構成のヴィオラ協奏曲。第2楽章にジョスカン・デ・プレのシャンソンや「(南米:引用者注)コロンビアの世俗的な音楽を思い起こさせるパッセージ」が現れる。

 演奏は、アンサンブルのまとまりに欠け、書き留めるべき感想は残らなかった。

 2曲目はニュージーランドの作曲家ジャック・ボディ(1944‐2015)の「死と願望の歌とダンスSongs and Dances of Death and Desire」(2012/2016)。本作も初めて聴く曲だ。演奏は一転してよく練られ、音に緊張感があって、思わず惹きこまれた。

 オリジナルはオーケストラ伴奏の連作歌曲だが(2013年初演)、佐藤紀雄の依頼で室内楽版が作られ(13曲の抜粋、2014年アンサンブル・ノマドが初演)、今回さらに改訂版が作られた(2曲が追加され、使用楽器も増加)。

 これはユニークな作品だ。歌手は3人。1人は先住民族のマオリ族の言葉で歌うメレ・ボイントン。魂の叫びを感じさせる。もう1人はスペイン語で歌う波多野睦美。本場の味わいがある。もう1人はビゼーの「カルメン」の断片をフランス語で歌うカウンター・テナーのシャオ・マ。「カルメン」本来の官能性を蘇らせるような声だ。

 さらに加えて、森山開次のダンスが入った。衣装を変えながら4つのキャラクターを踊ったが、最初のキャラクターは、本作がその想い出に捧げられたマオリ族出身の女装のダンサー、カルメン・ルーペを描いたもの。性的マイノリティの苦しみと欲望が感じられた。

 カーテンコールに子どもたちが何人も登場した。あれッと思ったら、アンコールを歌ってくれた。フルートとマリンバの伴奏によるリズム中心の元気のよい曲。ジャック・ボディの「レイン・フォレスト」から『子どもの遊び』という曲だった。
(2016.8.22.サントリーホール小ホール)
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