Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

巨匠たちのクレパス画展

2018年08月18日 | 美術
 今年の夏は「モネ」とか「ルーヴル美術館」とかのビッグネームを冠した展覧会が開かれている一方で、「山椒は小粒でもぴりりと辛い」といった趣のユニークな展覧会もいくつか開かれている。「巨匠たちのクレパス画展」もその一つ。

 クレパスという言葉は、クレヨンとパステルを組み合わせた造語。クレパスは、両者の長所を兼ね備えた画材として、1925年(大正14年)に日本で開発された。開発は株式会社サクラクレパス(現社名)。同社によって商品登録されている。

 本展はクレパスで描かれた作品を集めたもの。大家の作品から現代の画家の作品まで150点。まさに百花繚乱の様相を呈する。

 チラシ(↑)に掲載された作品を紹介すると、上段の右は小磯良平(1903‐1988)の「婦人像」。本展の中でも一際目を引く作品だ。左方向から差し込む強い光を捉えている。その表現の方法が(たとえばハイライトの付け方とかアイシャドウの付け方など)、間近で見るとよくわかる。油彩と違って、クレパスだとその痕跡がはっきり残るからだ。

 その下は山下清(1922‐1971)の「花火」。素朴な絵だが、よく見ると手前の男の子と女の子が(花火を見ずに)顔を見合わせているのが微笑ましい。その左は岡本太郎(1911‐1996)の「虫」。虫の爆発(!)だ。間近で見ると、太郎の手の激しい動きが目に見えるようだ。

 その左は猪熊弦一郎(1902‐1993)の「顔」。パステルの上に水彩をかけたり(パステルが水彩をはじいて独特の効果を生む)、またパステルを引っ掻いて白い地色を出したりして、多様な技巧を試みている。その上は熊谷守一(1880‐1977)の「裸婦」。簡素な作品だが、赤い輪郭線が守一そのもの。

 その右は山本鼎(1882‐1946)の「江の浦風景」。山本はクレパスの開発に深くかかわった画家だそうだ。チラシの上段中央に掲載したのは、山本へのオマージュだろう。

 チラシに掲載された作品だけでも、ざっと以上のようになるが、それ以外の作品にもおもしろいものが多い。もっとも印象的だったのは、日本画家の加山又造(1927‐2004)の「薫風」。いかにも加山らしく神経質に折れ曲がった細い線で真鯉と緋鯉を描いている。バックが灰色なのがシックだ。もう一人、名前だけ記すと、瀧本周造(1951‐)という未知の画家に注目した。
(2018.8.14.損保ジャパン日本興亜美術館)

(※)上記の作品の画像(本展のHP)
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