Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

広上淳一/N響

2018年11月26日 | 音楽
 広上淳一指揮N響のアメリカ音楽プログラム。曲目はバーバー(1910‐1981)、コープランド(1900‐1990)、アイヴズ(1874‐1954)のそれぞれ20代の作品。沼野雄司氏のプログラム・ノーツの指摘で「20代の作品」という点に気付いたが、実際に聴いてみると、その点が(意外なくらいに)重要な意味を持つことがわかった。その点にかぎらずプログラム・ノーツ全体が、短いながらも、卓抜なアメリカ音楽論になっていて、さすがだと思った。

 1曲目はバーバーの「シェリーによる一場面のための音楽」。シェリーとはロマン派詩人のシェリーのこと。作曲年代は1933年の夏だから、バーバーはまだ20代前半。冒頭で弦楽器が奏でる音が繊細だ。バーバーがメノッティ(作曲家のメノッティ)とともに過ごした夏に書いた。私生活上のそのような出来事とも関係しているのだろう、バーバーの感性がみずみずしく震えている。

 演奏もそういう感性を湛えたものだった。柔軟で力まず、流れがよい。広上淳一とN響がよくかみ合っていた。わたしは広上がキリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクールに優勝した翌年(1985年)、アシュケナージの来日公演でN響を振ったのを聴いているが(がむしゃらな指揮ぶりで、今想い出すと、微笑んでしまう)、今年還暦を迎えた広上は、N響を振っても堂々と鳴らすようになった。

 2曲目はコープランドの「オルガンと管弦楽のための交響曲」。バーバーの曲もそうだったが、この曲もわたしには初めてだった。2~3管編成のオーケストラに多数の打楽器が入り、そこにパイプオルガンが加わるという巨大編成。若き日のコープランドの野心満々の作品だ。

 オルガンの音が強烈だった。サン=サーンスの例の交響曲より強烈に感じた。オルガンは鈴木優人。アンコールにはバッハのシュープラー・コラール集から第1曲「目覚めよと呼ぶ声のする」が演奏された。

 3曲目はアイヴズの交響曲第2番。流れのよい演奏だ。広上淳一はこの曲を得意にしているのではないだろうか。そう思うほど手の内に入った演奏だった。どこかで聴いたことのある懐かしいメロディーが頻出するが、それらの引用が音楽の流れにしっくり収まっていた。

 第5楽章でのチェロ独奏が見事だった。日本フィルの辻本玲の客演。カーテンコールではN響の楽員からも拍手が起きた。
(2018.11.25.NHKホール)
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