Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴェデルニコフ/N響

2018年12月03日 | 音楽
 N響の12月の定期は、デユトワの来日が中止になったので、代わりにヴェデルニコフ、フェドセーエフ、ヘンゲルブロックが登場する。とくにヘンゲルブロックは、瓢箪から駒が出たようなもので、期待がつのる。ヘンゲルブロックの演奏会は今週末にあるが、その前にヴェデルニコフの演奏会があった。

 曲目はオール・ロシア・プロ。1曲目はスヴィリドフ(1915‐1998)の組曲「吹雪」。元はプーシキンの原作に基づく映画のための音楽だが、それを演奏会用組曲に編曲したもの。そのためか、たいへんわかりやすい。明快でロシア情緒に浸ることができる。とくに第4曲(全体は9曲で構成)は、情感豊かな旋律が何度も繰り返され、そこにオブリガート旋律が絡まって、どこか懐かしい感じがする。

 驚いたのは第6曲「軍隊行進曲」。弦楽器はお休みで、木管、金管と打楽器だけで演奏される。まさにN響ウインドアンサンブルだ。それはもう見事なもの。中学・高校と吹奏楽に明け暮れたわたしの昔日の血が騒いだ。

 2曲目はスクリャービンのピアノ協奏曲。ピアノ独奏はアンドレイ・コロベイニコフ。いうまでもないが、ショパンの影響が濃厚な曲。後年の異端的な面影は微塵もない。そんな曲を楽しむには、演奏が重すぎた。遊びがなくて息苦しい。それは主にピアノの演奏に由来するが、オーケストラもなす術がなかった。

 アンコールにスクリャービンの練習曲集作品42から第5曲嬰ハ短調が演奏された。わたしはこの方がおもしろかった。左手が轟々と鍵盤をたたき、右手も負けていない。ピアノから猛烈なエネルギーが巻き起こった。

 3曲目はグラズノフの交響曲第7番「田園」。これはおもしろかった。高橋健一郎氏のプログラム・ノーツで指摘されているが、第1楽章はたしかにベートーヴェンの「田園」交響曲を思い起こさせる。そのパロディーというより、真面目な再構成(パラフレーズ)という感じがする。第2楽章以下はグラズノフの音楽が展開する。

 ヴェデルニコフの指揮は、今まで何度か聴いたことがあるが、この曲は名演の一つだ。N響をバランスよく鳴らし、全体的に安定感がある。音がベタッとせずに弾みがある。ヴェデルニコフは主情的な表現をするタイプではないので、そんな音楽性がグラズノフの音楽によく合っているようだ。

 ヴェデルニコフの音楽性にはネーメ・ヤルヴィと似たところがあるのではないかと思う。
(2018.12.2.NHKホール)
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