Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2020年09月27日 | 音楽
 高関健指揮の東京シティ・フィルの定期。高関健がプレトークでいっていたが、「2月の飯守泰次郎先生の定期のとき以来の、日にちもプログラムも変更のない定期」。なるほど、そういわれてみると、たしかにそうだ。10月以降はそうもいかず、すでに11月はプログラムの一部変更が発表になっているが、今回はその間隙をぬった変更なしの定期だ。

 1曲目はバッハ(エルガー編曲)の「幻想曲とフーガ ハ短調」。原曲はBWV537のオルガン曲だが、それをエルガーが編曲した。エルガーのバッハ編曲というのは珍しいが、最晩年の作品のようだ。幻想曲の部分は、寂しげな沈んだ音調で、いかにもエルガーらしい。柴田克彦氏のプログラム・ノーツによると、「6/4拍子から3/4拍子に変更」されているそうだから、その影響もあるのかもしれない。フーガの部分はド派手な編曲で、びっくり仰天だ。これがエルガーかと、エルガーのイメージが揺らぐ。

 2曲目はジョゼフ・ジョンゲン(1873‐1953)の「オルガンと管弦楽のための協奏的交響曲」(1926)。ジョンゲンは3曲目に演奏されるフランク(1822‐1890)と同郷のリエージュ生まれのベルギーの作曲家。わたしには未知の作曲家だったが、この曲は日本でも時折演奏されるらしい。4楽章構成で、演奏時間約40分の堂々たる曲だが、基調にはラテン系の明るさがあり、親しみやすい曲だ。

 演奏されないことはないのだろうが、その頻度は多くはないのは、この曲をレパートリーにもつオルガン奏者の確保が難しいからかもしれない。約40分の演奏時間のほとんどが弾きっぱなしのうえ、第4楽章は、本来速い動きが苦手なはずのオルガンが、目が覚めるような壮絶な動きをする。演奏効果満点だ。今回オルガン奏者をつとめた福本茉莉は1987年生まれの若い奏者だが、パワフルかつダイナミックな演奏を聴かせた。現在はドイツのワイマールの音楽大学で常勤講師をしている。世界に通用する大型奏者だろう。

 3曲目はフランクの「交響曲 ニ短調」。冒頭の低音の動きがオルガンの音のように聴こえた。1曲目と2曲目でオルガンを強く意識していた影響もあるだろう。その冒頭から一貫して音のニュアンスへの配慮が感じられ、全曲を通してフランクのこの曲への敬意と誠実さが感じられる演奏となった。わたしは、フランクはとくに好きな作曲家のひとりなので、じつはかえって、演奏前には、一抹の不安もあったが、それはきれいに払しょくされた。東京シティ・フィルが高関健のもとで音のパレットを豊かにしていることが実感される演奏になった。

 ホルンの谷あかねさんが見事な演奏をした。この曲はこんなにホルンが活躍する曲だったのかと、新発見をした思いだ。
(2020.9.26.東京オペラシティ)
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