Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フェスタサマーミューザ:下野竜也/日本フィル

2021年08月08日 | 音楽
 東京では朝から台風10号の影響が出始め、ときおり激しい雨が降り、しばらくすると止むという天気が続いた。当日の演奏会はマチネー公演だったので、昼食後、早めに家を出てJRで川崎駅に向かった。川崎駅の手前で雨が降り出し、着いたときには激しい雨になった。駅のコンコースで様子を見た。少し小降りになったころを見計らって、小走りで会場のミューザ川崎に行った。

 当日は下野竜也指揮日本フィルの演奏会。プログラムはメインにベートーヴェンの劇音楽「エグモント」全曲を据え、前半にはウェーバーの「オベロン」序曲、ヴォーン・ウィリアムズの「グリーンスリーヴスによる幻想曲」そしてオットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲を置いたもの。

 前半と後半がどう関連するか、よくわからなかったが、下野竜也のプレトークと柴田克彦氏のプログラム・ノーツによれば、前半はシェイクスピアの戯曲によるもの、後半はゲーテの戯曲によるもので、全体としては二大文豪というコンセプトだそうだ。「グリーンスリーヴスによる幻想曲」はどうか?と思ったが、原曲が「ウィンザーの陽気な女房たち」で言及されているらしい。

 演奏だが、「オベロン」序曲でのホルンの安定感(首席奏者の信末さん)、「グリーンスリーヴスによる幻想曲」でのフルートの豊かな音色(首席奏者の真鍋さん)など、個別の奏者は光っていたが、全体としてはアンサンブルを整えるだけで終わったように思う。その中では「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲が一番興に乗った演奏だった。

 わたしは、いっそのこと、プログラム前半はベートーヴェンの交響曲でもやってくれたらよかったのにと思った。「エグモント」と同じころの作品なら、交響曲第6番「田園」あたりになるが、どれにするかは二の次にして、もっと演奏意欲を湧かせるプログラムを考えてほしかった。

 「エグモント」全曲はさすがに目的意識をもった演奏だった。序曲は重厚な音と正統的な形式感をもって演奏された。クレールヒェンの歌2曲を歌った石橋栄実は芯のある歌い方だった。語りをつとめた宮本益光はドラマティックだった。個別の奏者ではオーボエ(首席奏者の杉原さん)の表情豊かな演奏が印象的だった。トランペットの首席は東京シティ・フィルの松木さんがゲストで入った(日本フィルの橋本さんのお弟子さんだ)。

 良い演奏だったのだが、あえていえば、華がほしかった。がっしりと構築された手堅い演奏だが、そこを超える熱い共感とか、偉大さとか、なにかひと味がほしかった。
(2021.8.7.ミューザ川崎)

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