Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴァイグレ/読響

2019年05月25日 | 音楽
 ヴァイグレがワーグナーとベートーヴェンでどんな演奏をするのか、それを聴いてみたくて、名曲シリーズに行った。1曲目はワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から第1幕への前奏曲。出だしは音が濁ったが、すぐに立て直した。全体に荒っぽいが、そこからヴァイグレのやりたいことがよく伝わってきた。テンションが高くて、ダイナミズムに富むワーグナー。オペラティックな興奮を誘う。

 2曲目はシューマンのチェロ協奏曲。チェロ独奏はユリア・ハーゲン。クレメンス・ハーゲンのお嬢さんで1995年生まれ。スター然としたところがなく、ドイツやオーストリアで普通に見かける若者といった感じだ。音が常にはっきり聴こえ、闊達な演奏だったが、稀に強いアクセントが付く癖があった。

 アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲第1番からサラバンド。短い曲なので、演奏がどうのこうのということはないが、若者が弾くバッハは好きだなと、そう思わせる演奏だった。

 ヴァイグレ指揮読響のバックは、控えめすぎず、雄弁な演奏だった。独奏チェロともよく合い、ぎこちなさがなかった。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。弦は12型(12‐10‐8‐6‐5)で引き締まった音で鳴った。テンポも速めというか、遅くはなく、きびきびした演奏で、ワーグナーの演奏とはイメージが違った。ピリオド様式ではないが、重厚長大なロマン主義的な演奏でもなく、輪郭のはっきりした造形感を打ち出した。

 全体的に読響のアンサンブルの精度が際立った。見事なものだ。カンブルランの成果がまだ残っている。個別の奏者ではオーボエ首席奏者の情感あふれるソロに惹かれた。なお、第4楽章の最初のほうの変奏で、一般的には弦楽合奏でやる部分が、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各一人で(ソリで)演奏された。

 読響のヴァイグレ体制は始まったばかりだが、これまでのアルブレヒト、スクロヴァチェフスキ、カンブルランの各体制と比べると、少し違うニュアンスを感じる。それは何かというと、アルブレヒト、スクロヴァチェフスキ、カンブルランは、それぞれ経験豊富で、その果実を読響に分け与えるニュアンスがあったが、ヴァイグレの場合は、今まさに経験を積み上げる秋(とき)に当たっているように感じる。

 そのような秋(とき)をともに過ごすことが、読響のまた一皮むける契機になるといい。
(2019.5.24.サントリーホール)

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