Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ポンス/N響「MUSIC TOMORROW 2019」

2019年05月29日 | 音楽
 今年のN響のMUSIC TOMORROW、1曲目は薮田翔一(1983‐)の「祈りの歌」。N響委嘱作品で世界初演。全体は「7つの短い音楽で構成」(作曲者自身のプログラム・ノート)されている。真ん中の「4」のところでは、弦楽合奏が美しい音楽を奏でるが、どこか既視感も漂う。「6」と「7」ではソプラノのヴォカリーズ(ソプラノ独唱はクレア・ブース)が加わるが、そこは甘ったるかった。

 2曲目は今年の尾高賞受賞作品、藤倉大(1977‐)の「Glorious Clouds for Orchestra」。無数の音の粒子が空中に舞い、それがいったん沈静化するが、動きは継続し、やがて音が集積して透明な層を形成し、圧倒的な音圧を発する、といった趣の曲。藤倉大の(既成の価値観から離れた)独自の思考方法と、ますます磨きのかかる雄弁な語法との両方が感じられる作品だ。

 外山雄三、尾高忠明、片山杜秀の選考委員3氏の選評を読むと、今年の尾高賞にノミネートされた作品は17作あったが、そのうち藤倉大の作品は本作を含めて3作あったとのこと。他の2作品は、今年1月の読響定期で演奏されたピアノ協奏曲第3番「IMPULSE」(指揮は山田和樹、ピアノ独奏は小菅優)と、わたしは未聴だがチェロ協奏曲(オーケストラ版)。こうなると、チェロ協奏曲も聴いてみたくなる。

 3曲目はジョージ・ベンジャミン(1960‐)の「冬の心」(1981年)。作曲者の「初期の代表作」(白石美雪氏のプログラム・ノート)。ウォレス・スティーヴンスの詩「スノー・マン」に作曲したもので、ソプラノ独唱が入る。「小品」(同)ではあるが、ニュアンス豊かな音楽が続き、心の襞に分け入ってくる。わたしは当夜の4曲の中では、この曲が一番気に入った。

 クレア・ブースの独唱もよかった。ヴィブラートがきついところがあり、他の曲では気になるかもしれないが、この曲ではそれもニュアンスの一つだった。

 4曲目はベネト・カサブランカス(1956‐)の「いにしえの響き――管弦楽のための即興曲」(2006年)。オーケストラがよく鳴った。その鳴り方は重心が低く、前3曲の重心の高い鳴り方と対照的だったが、むしろこの曲のほうが普通の鳴り方かもしれない。演奏後には作曲者が現れて拍手を受けた。

 指揮はジュゼップ・ポンス(1957‐)。「2012年、リセウ劇場音楽監督に就任」(プロフィール)とある(リセウ劇場はバルセロナの歌劇場)。N響とは初共演だが、落ち着いたリードぶりだった。
(2019.5.28.東京オペラシティ)

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