Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

メッセニアの神託

2015年03月02日 | 音楽
 ヴィヴァルディのオペラ「メッセニアの神託」。前回の「バヤゼット」の興奮が再現するかどうか、注目の公演だった。結果あの興奮が再現した。会場は沸きに沸いた。

 前回の「バヤゼット」は2006年だった。9年前だ。もうそんなになるのかと、びっくりする。あのときの記憶は今でも鮮明だ。那須田務氏のエッセイによれば、「今日でも人々の間で語り草になっている」。そうだろうと思う。

 「バヤゼット」も「メッセニアの神託」もパスティッチョ・オペラだ。「バヤゼット」のときは、その言葉さえ知らなかったが。パスティッチョ・オペラには、興行主(インプレサーリオ)が複数の作曲家の音楽を付けるものと、一人の作曲家が自作・他作とりまぜて付けるものと、2通りのタイプがあるそうだ(ファビオ・ビオンディのインタビュー記事より)。

 「バヤゼット」と同様、「メッセニアの神託」も後者のタイプだ。もっとも、1737年(異説あり)のヴェネチア初演のときの台本と楽譜は失われている。また、ヴィヴァルディ没後の1742年におこなわれたウィーン再演のときの楽譜も失われている。ただ、近年台本が発見されたので、ビオンディが曲を推定して上演用の版を作成した。

 推定の確度はどの程度なのだろう。上述のインタビュー記事によると、ヴィヴァルディは、同一のテクスト、あるいはよく似たテクストの場合、いつも同じ曲を付けていたので、「とても高い可能性で想像できた」そうだ。

 厳密にいえばビオンディ版だが、「バヤゼット」と同様、面白くて、面白くて、呆気にとられた。結果的にはバロック・オペラ名曲選だ。パスティッチョ・オペラとは面白いものだと、今回も思った。

 歌手ではメゾ・ソプラノのユリア・レージネヴァJulia Lezhnevaが、第2幕と第3幕の超絶技巧のアリアで満場の聴衆を唸らせた。ロシア出身。バロック・オペラ以外にはロッシーニなどを歌っているそうだ。この人のロッシーニも聴いてみたい。「バヤゼット」で強い印象を受けたヴィヴィカ・ジュノーVivica Genauxは、第3幕のアリアで切々たる感情表現を聴かせた。

 ビオンディ率いるエウローパ・ガランテは水際立った演奏だった。ピリオド系の団体としては(わたしが聴いた中では)とび抜けて高性能だ。なお、彌勒忠史の演出は、扇や日本刀を使った日本テイスト(?)の演出で、無くもがなだった。
(2015.3.1.神奈川県立音楽堂)

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