Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

イスラエル博物館所蔵「印象派・光の系譜」展

2021年11月03日 | 美術
 10月はいろいろあって疲れがたまった。美しいものが見たくなって、三菱一号館美術館で開催中の「印象派・光の系譜」展に行った。会場に入るなり、コローの作品が並んでいて、癒される思いがした。

 本展はエルサレムのイスラエル博物館から印象派の作品を借りてきたものだ。コロー、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーガンなど、お馴染みの画家の作品が並ぶ。もっとも作品それぞれは初来日のものが多いので、新鮮さがある。

 本展で異彩を放つのは、レッサー・ユリィLesser Ury(1861‐1931)という画家の作品だ。ユリィの作品は4点来ているが、その中の「夜のポツダム広場」は本展のホームページ(※)に画像が載っているので、まずその作品に触れると、それはベルリンの繁華街のポツダム広場の夜の情景を描いている。雨が降っている。道行く人々は傘をさしている。ネオンサインが雨に煙る。レストランの明るい光が路面に映る。画面全体からポツダム広場の夜の賑わいが伝わる。

 「夜のポツダム広場」の隣に「冬のベルリン」という作品が展示されている。こちらは午前または午後のベルリンの大通りだ。ベルリンでは雪が降ることもあるが、この日は雨が降ったのだろう。雨上がりの歩道を人々が行く。人々の影が濡れた路面に映る。雨上がりのさわやかな空気が伝わる。

 あとの2点にも触れたいのだが、画像を紹介できないので省略する。ともかくわたしはレッサー・ユリィという画家に興味をもった。調べてみると、ユリィはドイツ印象派の画家のひとりだ。ドイツ印象派というと、マックス・リーバーマン、ロヴィス・コリント、マックス・スレーフォークトの3人が有名だが、ユリィはその同時代人だ。リーバーマンと同様に、ユリィもユダヤ系だったようだ。リーバーマンは晩年にナチスの迫害にあったが、ユリィはどうだったのだろう。

 ユリィについてはこのくらいにして、他の画家の作品にも触れておきたい。本展のホームページに画像が載っている作品でいうと、ゴーガンの「犬のいる風景」とボナールの「食堂」に惹かれた。まずゴーガンの「犬のいる風景」は、遠目からその作品を見たとき、異様な迫力を感じた。赤紫色の土地と緑色の林が描かれている。それらの色に艶がない。犬と鶏の闘いが小さく描かれている。本作はゴーガンが亡くなった年に描かれた作品だ。死を前にしたゴーガンの心象風景が感じられる。一方、ボナールの「食堂」は、テーブルについた女性の黄色い服と、卓上のレモンとバナナとが、黄色のハーモニーを織りなす。ゴーガンとは対照的に、穏やかで、どこかメランコリックな作品だ。
(2021.11.2.三菱一号館美術館)

(※)本展のホームページ

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