Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

鈴木優人/東響

2023年08月20日 | 音楽
 東京交響楽団の真夏の定期演奏会。鈴木優人の指揮でメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」と交響曲第2番「賛歌」。

 鈴木優人は2019年にN響を振ったときにも交響曲第5番「宗教改革」をプログラムに組んだ。それもメインの曲として。あれは堂々とした演奏だった。今回もそれを彷彿させる充実した演奏だ。メンデルスゾーンの音楽がいかに豊かな音楽的内容を持っているかを証明するような演奏だ。

 今回は第3楽章アンダンテの弦楽器のノンヴィブラートの澄んだ音色がことのほか美しかった。心が洗われるような美しさだ。また第3楽章から第4楽章にかけてのブリッジ部分のフルート・ソロに魅了された。首席奏者の相澤政宏さんだと思う。演奏終了後、鈴木優人が真っ先に立たせていた。

 交響曲第2番「賛歌」も立派な演奏だった。鈴木優人の指揮もさることながら、合唱の東響コーラスが全員暗譜で歌ったことに脱帽だ。そんなに頻繁に演奏する曲ではないのに、よく暗譜するまで練習を積んだものだ。ハーモニーも見事で、音圧もあり、アカペラの部分も美しかった。ソプラノとアルトの人数がテノールとバスの人数よりも1.5倍くらいあったためか、ソプラノが入ってくると、声の柔らかい厚みが印象的だった。

 独唱者は第1ソプラノが中江早希、第2ソプラノが澤江衣里、テノールが櫻田亮。中江早希の豊かな声は耳の贅沢だが、ソプラノ・デュオのときの澤江衣里もしっかり歌い、申し分のないデュオだった。櫻田亮は語るような歌い方でバッハの受難曲の福音史家を思わせ、演奏全体に彫りの深さを加えた。

 鈴木優人の指揮は、第5番と第2番に共通するが、背筋を伸ばした(もちろん比喩的にいっているが、実際の指揮姿もそうだった)まっすぐな演奏で、柔軟性にも欠けず、みずみずしい感性が行き渡っていた。もちろん、やわなメンデルスゾーンではなく、スケールが大きく、力感あふれるメンデルスゾーンだ。オーケストラともよくかみ合っていた。

 最後に、補足ながら、プログラムに載った星野宏美氏の「ややこしいメンデルスゾーンの交響曲の番号付け」というエッセイに触れたい。メンデルスゾーンには番号付きの交響曲が5曲あるが、その番号は出版順だ。では作曲順だとどうなるか。それが一筋縄ではいかない。作曲を着想してから出版までに長い変遷を辿るからだ。当エッセイには5曲の着想から出版までが図解されている。第3番、第4番、第5番は1829年~1830年に集中して着想されている。その時期のメンデルスゾーンの頭の中はどんな状態だったのだろう‥。
(2023.8.19.サントリーホール)

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