Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

メナ/N響

2021年01月18日 | 音楽
 N響の、コロナ禍以来で初めての、日程、曲目、指揮者、ソリストのすべてが変更のない演奏会。来日した指揮者のファンホ・メナJuanjo Mena(スペインの指揮者。実力派の中堅指揮者のようだ)、ソリストのハビエル・ペリアネスJavier Perianes(スペインのピアニスト。優秀な若手のようだ)に感謝しなければならない。

 プログラムはラテン系の色彩豊かな曲目で組まれた。1曲目はピエルネの「ラムンチョ」序曲。初めて聴く曲だが、明るい音色の楽しい曲だ。弦で奏されるテーマの、その音色の鮮やかだったこと! わたしがN響の実演を聴くのは、コロナ禍以来初めてだが、N響が以前のクオリティを保っていることが実感された。

 2曲目はファリャの交響的印象「スペインの庭の夜」。明るさ一方のピエルネの前曲とはちがって、ファリャの音色には濃い陰影がある。久しぶりに聴くファリャの音色にゾクゾクした。オーケストラが高まるときの音の密度の高いこと! ペリアネスのピアノもオーケストラによく溶け込んでいた。

 このご時世なので、アンコールはないかなと思ったら、アンコールにファリャの「アンダルシアのセレナータ」が弾かれた。わたしは初めて聴く曲なので、だれの、なんという曲かは知らなかったが、スペイン情緒豊かな曲で、ピアノの音のみずみずしさに惹き込まれた。ペリアネスというピアニストは注目株だ。

 3曲目はヒナステラのバレエ組曲「パナンビ」Panambi。これも初めて聴く曲だが、ヒナステラのブエノスアイレス音楽院在学中の作品で、代表作「エスタンシア」の先行作品のようだ。ストラヴィンスキーの「春の祭典」を思わせる箇所が数か所あり、「春の祭典」の自由な引用といった面がある。作曲は1937年なので、「春の祭典」の1913年からはそうとうたっている。

 オーケストラが登場すると、その大編成に驚いた。4管編成で、打楽器奏者は7人いたのではないか(メモをしてこなかったので、記憶による)。ともかくステージいっぱいに楽員が並ぶ光景は、久しぶりというか、懐かしいというか、(もっと有体にいえば)一昔前の光景のように感じた。それだけわたしたちの感覚が(コロナ禍で)変わったのだろう。

 4曲目はラヴェルの「ダフニスとクロエ」第1組曲と第2組曲。オーケストラ編成は前曲とほとんど変わらない。この曲はこんなに大編成だったのか‥と。かつてこのような曲が、当たり前のように、連日演奏されていたことが、遠い夢のように思われた。演奏は指揮者メナのたしかな統率力が感じられるものだった。
(2021.1.17.NHKホール)

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