Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

尾高忠明/N響

2021年05月17日 | 音楽
 尾高忠明指揮N響の演奏会は、プログラムに組まれた4曲すべてにN響の楽員がソリストで登場し(総数10人!)、賑やかな演奏会だった。

 1曲目はハイドンのチェロ協奏曲第2番。ソリストは辻本玲。辻本玲はN響に移籍する前には日本フィルに在籍していたが、その頃わたしはプロコフィエフの「交響的協奏曲」(実質的にチェロ協奏曲だ)を聴き、鮮烈な印象を受けた(指揮はラザレフだった)。そのときの記憶にくらべると、今回は印象が薄かった。なぜだろう。曲目のちがいかもしれないが、それで割り切ることもできない気がした。

 2曲目はモーツァルトの4つの管楽器のための協奏交響曲。ソリストはオーボエが吉村結実、クラリネットが伊藤圭、ファゴットが水谷上総、ホルンが福川伸陽。みなさん名手なので、気楽に楽しませてもらった。ホルンの福川さんがオーケストラ(とくにヴィオラの第1プルト)と楽しそうにコンタクトをとっていたのが印象的だ。

 この曲はモーツァルトの真作かどうか、議論が分かれているが、そのせいか、実演で聴く機会は多くはない。とはいえ、楽しい曲であることは間違いない。あえていえば、オーケストラに積極性が乏しいかもしれない。そう感じるのは、この曲を聴くと、どうしてもヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を思い出してしまうからかもしれないが。

 3曲目はドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」。ハープは早川りさこ。ハープも美しかったが、この曲で印象的だったのは、むしろオーケストラだ。オーケストラといっても、この曲では管楽器は入らず、弦楽合奏だが、その弦楽合奏の統制がとれていた。ハイドンとモーツァルトでは緩い自由なアンサンブルを志向しているようだったが、この曲ではアンサンブルの精度を上げていた。

 4曲目はパヌフニク(1914‐1991)の交響曲第3番「神聖な交響曲」(1963)。この曲では冒頭のファンファーレをはじめ、4本のトランペットが活躍するが、そのトランペットは菊本和昭、長谷川智之、安藤友樹、山本英司の面々。明るい音色がホールに響きわたった。

 この曲は3つの「幻影」と「讃美歌」からなるが、そのうちの第3の幻影では打楽器が活躍する。パヌフニクには打楽器の活躍する曲が多い(交響曲第5番、第7番など)。また「讃美歌」の最後ではホルンが咆哮する。もう一点付け加えれば、第2の幻影と「讃美歌」の冒頭では弦楽器のハーモニーが美しい。演奏時間は約22分なので(プログラムの表記による)、長い曲ではないが、聴きどころが多い。わたしはいままでパヌフニクという作曲家に馴染みがなかったが、この曲はパヌフニク再発見のよい機会になった。
(2021.5.16.サントリーホール)

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