Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

アシュケナージ/N響

2018年06月17日 | 音楽
 アシュケナージ/N響のCプロ。1曲目はメンデルスゾーンの「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」。メンデルスゾーン14歳の時の作品。演奏時間35分ほどの堂々たる曲だ。メンデルスゾーンはモーツァルト並みの早熟ぶりだったと証明するような、その足跡を印した作品。

 ヴァイオリン独奏は庄司沙矢香、ピアノ独奏はヴィキンガー・オラフソン。庄司沙矢香は隠れもない名手だが、わたしは初めてその名を聞くヴィキンガー・オラフソンも、そうとうの名手のようだ。1984年アイスランド生まれ。ジュリアード音楽院卒業。

 ヴァイオリンとピアノを独奏楽器に持つ協奏曲は、他に何があったろうと考えて、すぐに思い出すのは、ショーソンの「ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲」だが、さてヴァイオリンとピアノだけとなると‥。

 メンデルスゾーンの本作では、緩徐楽章に当たる第2楽章が、オーケストラが必要最小限にしか使われていないこともあり、ヴァイオリン・ソナタの緩徐楽章のような趣があった。しんみりとした両者の対話。二人の独奏者には存在感があった。一転して第3楽章は手に汗握るような圧巻の演奏。ヴァイオリンよりもピアノのほうに比重がかかった書き方をされているので、オラフソンのリードの仕方が息をのむようだった。

 アンコールにパラディースの「シチリアーノ」が演奏された。よく聴く曲だが、それがだれの何という曲かは意識していなかった。メンデルスゾーンの協奏曲と違って、こちらは一貫してヴァイオリンが主導し、ピアノは最小限の和音をつけるだけ。そのしみじみとした情感が、メンデルスゾーンの第3楽章で火照った気持ちをクールダウンした。

 プログラム後半はまずヤナーチェクの「タラス・ブーリバ」から。久しぶりに聴いたが、その久しぶりが功を奏したのか、ヤナーチェクの独特な書法が、面白くて、面白くて、目を見張った。断片的で、断定的で、しかも唐突に変わる音楽。大編成のオーケストラだが、それがトゥッティで鳴ることはほとんどない。

 アシュケナージの指揮は、思い入れたっぷり。音楽の断片と断片、そしてその断層とを見つめるような演奏だった。

 最後はコダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」。オーケストラ編成は「タラス・ブーリバ」と同程度だが、鳴らし方はうまい。第3曲「歌」を中心にN響各奏者のニュアンス豊かな名人芸を楽しんだ。
(2018.6.16.NHKホール)

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