Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

マイスター/読響

2018年06月20日 | 音楽
 コルネリウス・マイスターが振る読響の定期だが、その前に6月16日に亡くなったゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの追悼演奏が行われた。曲はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」から「情景/冬の松林」。なんて洒落た選曲だろう。少女クララが王子に連れられてお菓子の国に向かう途中の幻想的な場面。ロジェストヴェンスキーを送るにふさわしい曲だ。(写真↑はホワイエに展示されたロ翁のスコアと指揮棒)

 さて、定期はオール・リヒャルト・シュトラウス・プロ。1曲目は交響詩「ドン・キホーテ」。チェロ独奏は石坂団十郎、ヴィオラ独奏は読響のソロ・ヴィオラ奏者、柳瀬省太。二人とも艶のある音色で技術も十分。しかもオーケストラと溶け合って、全体がしっくりまとまった演奏になった。

 マイスターの指揮は、オペラ指揮者だけあって、細かいドラマ作りがおもしろかった。たとえば第2変奏での羊の群れを表す金管のフラッター奏法では、各楽器をてんでんばらばらに鳴らして、普段耳慣れない音が前面に飛び出し、無秩序な情景を描いた。

 2曲目は歌劇「カプリッチョ」から前奏曲と月光の音楽。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ各2本で演奏される前奏曲は、さすが読響というべきか、しっとりした情感があり、危なげなく、安心して聴くことができた。月光の音楽もホルンが安定して、これも危なげなかった。

 前奏曲と月光の音楽とを続けて演奏すると、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と愛の死のような効果を生んだ。入り口と出口だけの演奏だが、ワーグナーの場合と同様、シュトラウスの場合も、このオペラの、たゆたうような、繊細で気品のあるエッセンスが伝わった。

 3曲目は歌劇「影のない女」による交響的幻想曲。オペラからの抜粋曲だが、シュトラウス自身が1946年に作成した版があり、それは実用版というか、オーケストラ編成を縮小した版なので、ペーター・ルジツカが2009年に本来の編成に近いものに編作したそうだ。その編作版での演奏。

 演奏は、明るく、艶のある音色で、柔軟なアンサンブルを展開した。マイスターと読響とがよくかみ合った演奏。わたしが今まで聴いたこのコンビは、少なくともマーラーの交響曲第6番や第3番では、どこかぎくしゃくしていたが、今回は息が合っていた。

 マイスターの本領発揮だろうか。その美質がよく表れた演奏会だった。
(2018.6.19.サントリーホール)

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