Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ショハキモフ/東響

2022年09月18日 | 音楽
 東京交響楽団の定期演奏会にアジス・ショハキモフAziz Shokhakimovという指揮者が初登場した。ウズベキスタン出身だ。プロフィールに年齢の記載はないが、動作が若々しいので、30代か40代だろう。現在フランスのストラスブール・フィルの音楽監督とテクフェン・フィル(どこのオーケストラだろう)の芸術監督を務めている。

 1曲目はドビュッシーの「管弦楽のための映像」から「イベリア」。第1曲の「通りから道から」でのアクセントの強い表現と第2曲の「夜の香り」での陶酔的な弦楽器の音色が印象的だ。全体的に個々のパートが明瞭に聴こえた。

 2曲目はアンリ・トマジ(1901‐1971)の「トランペット協奏曲」(1948)。トランペット独奏はティーネ・ティング・ヘルセット。ノルウェー出身の女性奏者だ。キラキラ光るドレスを身にまとって登場。ドレスの反射光がトランペットの反射光と一体となり、ステージの照度が一段と増すように感じられた。演奏も(その反射光と一体となって)トランペットの輝かしい音色を放射した。

 アンリ・トマジのこの曲はわたしも何度か聴いたことがあるが、ヘルセットの演奏を聴いて、なるほど(トランペットとオーケストラの)こういう照度の高い明るい音色の曲だったのかと腑に落ちる思いがした。

 ヘルセットのアンコールがあった。一転して翳りのある表情の、滑らかに歌うような曲だった。オーレ・ブルという人の「メランコリー」という曲だそうだ。アンリ・トマジの「トランペット協奏曲」の切れ味鋭い演奏とは対照的な演奏だった。

 3曲目はプロコフィエフの交響曲第5番。前半2曲の演奏でショハキモフという指揮者に好印象を持ったので、プロコフィエフのこの曲をどう振るかと注目したが、いまひとつ精彩に欠ける演奏だった。プロコフィエフはドビュッシーやトマジに引けを取らない音色の明るさを持っているはずだが、なぜかそれが出てこない。どこかくすんだ音色に終始した。

 いうまでもないが、この曲は静―動―静―動の4楽章構成をとっており、静の楽章は音色の層の重なりで聴かせ、動の楽章は畳みかけるリズムで聴かせるが、静の楽章の音色は照度が低く、また動の楽章では、リズムの躍動感はあるものの、やはり音色の点で十分には満足できず、そのためか、リズムの切れ味にも物足りなさを覚えた。

 全体の構築はしっかりしていたので、ショハキモフの手の内に入った曲のように思えた。初顔合わせのオーケストラなので、まだ呼吸が合っていなかったのだろうか。
(2022.9.17.サントリーホール)

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