Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

熊倉優/N響

2021年02月13日 | 音楽
 イザベル・ファウストがシマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番を弾くので、聴きにいった。オーケストラは熊倉優指揮のN響。東京芸術劇場3階席のわたしには、ときにヴァイオリンの音がオーケストラに埋もれることがあったが、そのなかから繊細で集中力のあるヴァイオリンの音が聴こえた。演奏時間約23分(プログラム表記による)の単一楽章の曲で、全体の構成をとらえにくいが、最後まで注意をそらさずに聴いた。

 アンコールが弾かれた。なんという曲だろう。センスのある性格的な曲だ。その曲のなんと音楽的な(言い換えると、自由な音楽を感じさせる)演奏だったろう。イザベル・ファウストを聴いたという満足感があった。N響のツイッターを見ると、ニコラス・マタイスという作曲家の「ヴァイオリンのためのエアー集」から「前奏曲/パッサージオ・ロット/アンダメント・ヴェローチェ」とのこと。いつの時代のどんな作曲家かまったくわからないが、ともかく楽しんだ。

 イザベル・ファウストは来日中止になった別の演奏家の代役だった。たまたま来日していたので、滞在を延長して、代役を引き受けた。わたしたち聴衆にはラッキーだった。

 演奏会そのものも、本来はパーヴォ・ヤルヴィが振るはずだったが、プログラムはそのままに(イザベル・ファウストがいなかったら、協奏曲は変更になったかもしれない)若手指揮者の熊倉優が代役をつとめた演奏会だ。コロナ禍で登場機会の多くなった熊倉優も、わたしには興味の的だった。

 1曲目はスメタナの「売られた花嫁」から3つの舞曲、そしてシマノフスキの協奏曲をはさんで、3曲目にドヴォルザークの交響曲第6番が演奏された。そのどれもが鮮やかな演奏だった。1曲目のスメタナが始まった途端に、弾力性のあるリズムと、明るく鮮明な音色とがわたしの耳を奪った。ポジティブな音楽性にあふれた演奏だ。ボヘミアの民俗舞曲特有の躍動感もスリリングだった。

 3曲目のドヴォルザークの演奏も基本は同じだった。この曲は隠れた名曲だと思うが、どこか冗長さも否めないと、わたしは思うのだが、それにしても途中で弛緩することなく、よく最後までもっていった。1曲目のスメタナと合わせて、開放的な音楽性を感じた。縦の線をピシッと合わせる(小澤征爾以来の)タイプではなく、もう少し別の個性をもった指揮者の登場のようだ。

 熊倉優は2021年春以降にはヨーロッパに拠点を移す予定らしい。たしかに日本にいるよりも、外国にいたほうが自由に個性を伸ばせるかもしれない。
(2021.2.12.東京芸術劇場)

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