Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラザレフ/日本フィル

2021年04月25日 | 音楽
 ラザレフが来日して日本フィルの定期演奏会を振った。ラザレフの心意気に感じて、わたしは金曜日の定期会員だが、土曜日のチケットも買い(日本フィルの定期演奏会は金曜日と土曜日の2回ある)両方聴いた。久しぶりのラザレフだ。その演奏と聴衆とのコミュニケーションの両方を満喫した。

 演奏は両日とも基本的には変わらなかった。「金曜日よりも土曜日のほうがいい」といわれることもあるが、とくにそうは感じなかった。個々のプレーヤーではソロが金曜日よりも土曜日のほうが余裕を持って演奏しているように思える人もいたが、それはわたしのほうが(2度目なので)そのソロに注目していたせいかもしれない。

 プログラムはグラズノフの交響曲第7番「田園」とストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」(1947年版)。両曲共通して、演奏は引き締まったアンサンブルとスケールの大きさが特徴だった。それはもとよりラザレフの特徴なのだが、久しぶりに聴くと、その特徴が常人の域を超えて、桁外れなものに感じられた。

 グラズノフの交響曲第7番「田園」は、日本では演奏機会が稀な曲だが、ほのかなロシア情緒と西欧的な(野暮ったくない)オーケストレーション、そしてなによりもポジティブな感覚が横溢する曲だ。ラザレフはグラズノフの交響曲(全部で8曲ある)を順次取り上げているので、今回第7番になったのは偶然だろうが、コロナ禍で疲れているわたしたちには良い贈り物になった。

 ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」は、照度が一段と上がった。眩いばかりの明るい音色と鋭角的なリズム。そしてそれらの要素と共存する豪快さ。その豪快さこそラザレフらしさの所以だろう。今回は3管編成の1947年版が使われたが(初演時の1911年版は4管編成)、新古典主義云々といわれる1947年版にもかかわらず、その演奏は重量級といったらよいか、パワーあふれるものだった。

 そして忘れてはならないことは、ラザレフの聴衆とのコミュニケーションだ。カーニバルの市場に香具師が現れて、フルートを吹き「見物人を魔法にかけていく」(山崎浩太郎氏のプログラム・ノーツより)の場面で、ラザレフは客席を振り返り、「このフルートを聴いてくれ」といわんばかりの仕草をした。客席はドッとどよめいた。

 終演後の拍手は盛大だった。ラザレフがさらに拍手を煽るので、拍手は一段と大きくなった。ラザレフと聴衆とのコミュニケーションが続いた。楽員がステージを去っても拍手が鳴りやまず、金曜日も土曜日もラザレフのソロ・カーテンコールになった。
(2021.4.23&24.サントリーホール)

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