江戸川乱歩の「人間椅子」は今読んでも全然古さを感じない。
椅子の中の男はこんな男だ。
「私は考えました。この椅子の中の世界こそ、私に与えられた、ほんとうのすみかではないかと。私のような醜い、そして気の弱い男は、明るい光明の世界では、いつもひけ目を感じながら、恥ずかしい、みじめな生活を続けていくほかに、能のない身でございます。それがひとたび、住む世界をかえて、こうして椅子の中で、窮屈な辛抱をしてさえすれば、明るい世界では、口を利くことはもちろん、そばへよることさえ許されなかった、美しい人に接近して、その声を聞き、肌に触れることもできるのでございます」
自分の生きてる現実の世界への違和感。
人間嫌い。
逃避。安住の世界。
透明人間願望。
だが、主人公はそれだけでは満足できなくなってくる。
「私は、できるならば、夫人のほうでも、椅子の中の私を意識してほしかったのでございます。そして、虫のいい話ですが、私も愛してもらいたく思ったのでございます」
主人公はひとりの世界に満足できず、他人の愛を求める様になるのだ。
まさに今の時代の犯人像である。
主人公からの告白の手紙を読んで、目の前の椅子に恐怖する夫人。
そしてラストのオチ。
見事な好短編である。
★研究ポイント
「人間椅子」というありえないファンタジーの中にある犯人のリアリティ。
松本清張「張り込み」の生活に疲れた女。
〃 「凶器」 の嫌悪する男に言い寄られて困っていた女
も犯人像としてはあり得るのだろうけれど、こちらの方が今のリアリティがある。
椅子の中の男はこんな男だ。
「私は考えました。この椅子の中の世界こそ、私に与えられた、ほんとうのすみかではないかと。私のような醜い、そして気の弱い男は、明るい光明の世界では、いつもひけ目を感じながら、恥ずかしい、みじめな生活を続けていくほかに、能のない身でございます。それがひとたび、住む世界をかえて、こうして椅子の中で、窮屈な辛抱をしてさえすれば、明るい世界では、口を利くことはもちろん、そばへよることさえ許されなかった、美しい人に接近して、その声を聞き、肌に触れることもできるのでございます」
自分の生きてる現実の世界への違和感。
人間嫌い。
逃避。安住の世界。
透明人間願望。
だが、主人公はそれだけでは満足できなくなってくる。
「私は、できるならば、夫人のほうでも、椅子の中の私を意識してほしかったのでございます。そして、虫のいい話ですが、私も愛してもらいたく思ったのでございます」
主人公はひとりの世界に満足できず、他人の愛を求める様になるのだ。
まさに今の時代の犯人像である。
主人公からの告白の手紙を読んで、目の前の椅子に恐怖する夫人。
そしてラストのオチ。
見事な好短編である。
★研究ポイント
「人間椅子」というありえないファンタジーの中にある犯人のリアリティ。
松本清張「張り込み」の生活に疲れた女。
〃 「凶器」 の嫌悪する男に言い寄られて困っていた女
も犯人像としてはあり得るのだろうけれど、こちらの方が今のリアリティがある。