「課長 島耕作」のエピソード、Don't Be That Way はこんな話だ。
初芝のポスターのデザインが他社に盗まれる。
スペースシャトルを使ったものだ。
どうやら宣伝会議のコンセプト確定の段階で盗まれたらしいのだが、これで1万部刷ったポスターは使えない。
島は情報を漏らした社内のスパイを見つける役割を仰せつかる。
給湯室などに盗聴器を仕掛け、社員のうわさ話を採取するのだ。
そこで浮かび上がったのが、鳥海赫子という女性社員。
出入りの印刷会社・陽光印刷の専務の矢部と赫子のポスターに関する会話が収録されていたのだ。(実はこの赫子、島とは不倫関係にあるのだが、ここでは触れない)
島は矢部の犯罪を確定するため知り合いの探偵に調査を依頼する。
そして、陽光印刷・矢部がやった証拠と初芝の販売促進部・庭部長の不正を突き止める。
庭部長の件は、たまたま分かったことだった。
庭はポスターが使えなくなることを見越して、陽光印刷に半分の5千部しか印刷させず、その差益を自分のものにしていたのだ。
庭は同じ社内の人間だけに問題は大きい。
この件を上司の福田部長に報告すると、福田は手を叩いて喜んだ。
なぜなら、福田は宇佐美常務の派閥に属している人間であり、庭は派閥の違う水野専務派の人間だからだ。
この不正を役員も出席する本部長会議で告発すれば、水野派の力を弱めることができる。
そして本部長会議。
福田は告発し、水野派の力は弱められた。
常務の宇佐美は大喜びし、島の功績を認める。
その結果、「今度、(宇佐美)常務がゴルフでもやらんかと言っていたぞ」と福田に言われ、宇佐美の派閥に取り込まれる。そして、出世街道であるニューヨーク転勤を内示される。
この様な形で派閥に取り込まれることに戸惑う島。
しかし、出世はしたい。
「やったぞ」と思い、「さっき部長から内示を受けたんだ。凄いだろう。ハハハ」と妻に電話をかけるが、妻は「仕事と家庭とどっちが大事なのよ」と怒り出す。
その夜がクリスマスイブだったからだ。
喜びを共有できないことに戸惑う島。
友人の探偵を呼び出して酒を飲みながら愚痴を言う。
「男は扶養家族のために一生必死に働くんだ。そのくせ女共は家庭を顧みないとか言って亭主を責める。男って何なんだろうな」
そして、街で偶然見かける。
クビになった陽光印刷の専務・矢部が小さな娘の手を引いて街を歩く姿を。
矢部は娘に乞われて、売られていたクリスマスケーキの一番小さいものを買う。
そのやつれた矢部の姿を見て島は思う。
「会社をクビになったからといって早くも大きなケーキを買う金に困ったというわけでもないだろうが、矢部はいちばん小さいのを買った。家や車のローンを抱え、子供を学校に行かせる金も必要だし、しかも当面収入はないわけで……。そういったモロモロの不安がこの男の背中におおいかぶさってきて、一番小さなケーキを選んだのだ」
矢部の件があって、島は出世した。
しかし、矢部は島の告発のために地位を失った。
かすかに罪の意識を抱く島。
また、島は出世したが、妻と娘の信用を失った。
何かを得れば何かを失う。
島はその人生の苦い真実を噛みしめる。
★研究ポイント
「喜び」の背後には「哀しみ」があること。
何かを得れば、何かを失う。
そんな両面を描くことでドラマは深くなる。
大人の鑑賞に耐えうるドラマになる。
陽光印刷の専務のケーキのエピソードを入れたことは秀逸。
単に妻と子供が怒っているだけの描写では通常のドラマ作りで、これほどの深みは出なかっただろう。
通常のドラマ作りよりも一歩踏み込んで考えること、他に何か描けないかを考えてみることが作品を他とは違ったものにする。
★追記
島耕作の女性関係は非常に男性に都合よく描かれている。
不倫関係にあった赫子は、島の不倫を武器にして事件の告発を押さえることができたがそれを行わない。(理由は「(島のことを)好きになりそうだったから」)
田代友紀という女性社員と流れで関係を持ってしまったが、友紀は自分から身を引いて他の男と結婚してしまう。
島にとっては、実に都合のいい女たちだ。
出世して、しかもモテる。
「島耕作」は、世のサラリーマンの理想である。
だからウケた。
おまけに「人生の苦さ」も描かれているから共感も生まれる。
うまい作りの作品である。
初芝のポスターのデザインが他社に盗まれる。
スペースシャトルを使ったものだ。
どうやら宣伝会議のコンセプト確定の段階で盗まれたらしいのだが、これで1万部刷ったポスターは使えない。
島は情報を漏らした社内のスパイを見つける役割を仰せつかる。
給湯室などに盗聴器を仕掛け、社員のうわさ話を採取するのだ。
そこで浮かび上がったのが、鳥海赫子という女性社員。
出入りの印刷会社・陽光印刷の専務の矢部と赫子のポスターに関する会話が収録されていたのだ。(実はこの赫子、島とは不倫関係にあるのだが、ここでは触れない)
島は矢部の犯罪を確定するため知り合いの探偵に調査を依頼する。
そして、陽光印刷・矢部がやった証拠と初芝の販売促進部・庭部長の不正を突き止める。
庭部長の件は、たまたま分かったことだった。
庭はポスターが使えなくなることを見越して、陽光印刷に半分の5千部しか印刷させず、その差益を自分のものにしていたのだ。
庭は同じ社内の人間だけに問題は大きい。
この件を上司の福田部長に報告すると、福田は手を叩いて喜んだ。
なぜなら、福田は宇佐美常務の派閥に属している人間であり、庭は派閥の違う水野専務派の人間だからだ。
この不正を役員も出席する本部長会議で告発すれば、水野派の力を弱めることができる。
そして本部長会議。
福田は告発し、水野派の力は弱められた。
常務の宇佐美は大喜びし、島の功績を認める。
その結果、「今度、(宇佐美)常務がゴルフでもやらんかと言っていたぞ」と福田に言われ、宇佐美の派閥に取り込まれる。そして、出世街道であるニューヨーク転勤を内示される。
この様な形で派閥に取り込まれることに戸惑う島。
しかし、出世はしたい。
「やったぞ」と思い、「さっき部長から内示を受けたんだ。凄いだろう。ハハハ」と妻に電話をかけるが、妻は「仕事と家庭とどっちが大事なのよ」と怒り出す。
その夜がクリスマスイブだったからだ。
喜びを共有できないことに戸惑う島。
友人の探偵を呼び出して酒を飲みながら愚痴を言う。
「男は扶養家族のために一生必死に働くんだ。そのくせ女共は家庭を顧みないとか言って亭主を責める。男って何なんだろうな」
そして、街で偶然見かける。
クビになった陽光印刷の専務・矢部が小さな娘の手を引いて街を歩く姿を。
矢部は娘に乞われて、売られていたクリスマスケーキの一番小さいものを買う。
そのやつれた矢部の姿を見て島は思う。
「会社をクビになったからといって早くも大きなケーキを買う金に困ったというわけでもないだろうが、矢部はいちばん小さいのを買った。家や車のローンを抱え、子供を学校に行かせる金も必要だし、しかも当面収入はないわけで……。そういったモロモロの不安がこの男の背中におおいかぶさってきて、一番小さなケーキを選んだのだ」
矢部の件があって、島は出世した。
しかし、矢部は島の告発のために地位を失った。
かすかに罪の意識を抱く島。
また、島は出世したが、妻と娘の信用を失った。
何かを得れば何かを失う。
島はその人生の苦い真実を噛みしめる。
★研究ポイント
「喜び」の背後には「哀しみ」があること。
何かを得れば、何かを失う。
そんな両面を描くことでドラマは深くなる。
大人の鑑賞に耐えうるドラマになる。
陽光印刷の専務のケーキのエピソードを入れたことは秀逸。
単に妻と子供が怒っているだけの描写では通常のドラマ作りで、これほどの深みは出なかっただろう。
通常のドラマ作りよりも一歩踏み込んで考えること、他に何か描けないかを考えてみることが作品を他とは違ったものにする。
★追記
島耕作の女性関係は非常に男性に都合よく描かれている。
不倫関係にあった赫子は、島の不倫を武器にして事件の告発を押さえることができたがそれを行わない。(理由は「(島のことを)好きになりそうだったから」)
田代友紀という女性社員と流れで関係を持ってしまったが、友紀は自分から身を引いて他の男と結婚してしまう。
島にとっては、実に都合のいい女たちだ。
出世して、しかもモテる。
「島耕作」は、世のサラリーマンの理想である。
だからウケた。
おまけに「人生の苦さ」も描かれているから共感も生まれる。
うまい作りの作品である。