マリオンは50歳。
哲学科の教授で夫は優秀な医者。申し分ない人生。
そんな彼女が本を書き始めるために部屋を借りる。
部屋の隣は精神カウンセラー、患者と医者の会話が通気口を通じて聞こえてくる。
その会話をきいて、自分と自分の人生をふり返るというのがこの作品「私の中のもうひとりの私」だ。
ここでも、ウディ・アレンのテーマである辛辣な現実が描かれる。
カウンセラーとの会話をきいて、自分の人生の空虚をマリオンは感じるのだ。
精神科医に患者のホープ(ミア・ファーロー)はこう言う。
「私の人生は実のない人生。偽りだらけで生きてきた人生。自分で自分がわからない。傍にいる夫は他人のように見える」
これが呼び水になって、マリオンは自分の人生をふり返り、むき出しの現実を知る。
まず、医者の夫は浮気をしていた。
ふたりは連れだって友人たちと夕食を毎日のようにとっていたが、それはうわべだけのこと。
夫の心は離れていたのだ。
夫の心が離れたのは、子供ができた時のこと。夫は子供を望んだが、マリオンは仕事が大事で子供をおろしたのだ。
また、マリオンは数年ぶりに親友に会い、親友が自分を憎んでいたことを知らされる。弟に会うと、弟は優秀な姉に抑圧を感じ、彼女の親切を煙たがっていたことを聞かされる。
すべてを得ていたと思われた現実がガラガラと崩れ去ったのだ。
マリオンは理性的な人間だった。
彼女は言われる。
「いつも感情を抑え、冷たい頭脳だけの人間。そんな人間から人は離れていく」
マリオンは理性的であるが故に、情熱的なことに尻込みしてしまう人間だった。
情熱的、感情的になることで自分が失われてしまうことを怖れ、それらから逃げて来た人間だった。
マリオンはある作家から情熱的な求婚をされていたが、結局、現在の医者の夫を選んだ。
辛辣な人生がむき出しにされて、マリオンはその人生の選択が間違っていたのではないかと思う。
そして、打ちのめされた彼女は、その作家が彼女のことをモデルにして書いたという小説を読み始める。
その小説にはこう書かれていた。
「彼女は激しい情熱を持った女性だった。その抑圧を解きさえすれば」
自分を愛し、自分を理解してくれていた存在がいたことに少し救われるマリオン。
マリオンは浮気をした夫と離婚する。
情熱的な自分を、作品タイトルである「私の中のもうひとりの私」を認識した彼女がその後、どの様な人生を送ったかは描かれていない。
★研究ポイント
まず、自分と自分の置かれた現実を厳しく見据えよと語るウディ・アレン。
それはまた別の空虚であるかもしれないが。
理性的であることと感情的・情熱的であることとは?
哲学科の教授で夫は優秀な医者。申し分ない人生。
そんな彼女が本を書き始めるために部屋を借りる。
部屋の隣は精神カウンセラー、患者と医者の会話が通気口を通じて聞こえてくる。
その会話をきいて、自分と自分の人生をふり返るというのがこの作品「私の中のもうひとりの私」だ。
ここでも、ウディ・アレンのテーマである辛辣な現実が描かれる。
カウンセラーとの会話をきいて、自分の人生の空虚をマリオンは感じるのだ。
精神科医に患者のホープ(ミア・ファーロー)はこう言う。
「私の人生は実のない人生。偽りだらけで生きてきた人生。自分で自分がわからない。傍にいる夫は他人のように見える」
これが呼び水になって、マリオンは自分の人生をふり返り、むき出しの現実を知る。
まず、医者の夫は浮気をしていた。
ふたりは連れだって友人たちと夕食を毎日のようにとっていたが、それはうわべだけのこと。
夫の心は離れていたのだ。
夫の心が離れたのは、子供ができた時のこと。夫は子供を望んだが、マリオンは仕事が大事で子供をおろしたのだ。
また、マリオンは数年ぶりに親友に会い、親友が自分を憎んでいたことを知らされる。弟に会うと、弟は優秀な姉に抑圧を感じ、彼女の親切を煙たがっていたことを聞かされる。
すべてを得ていたと思われた現実がガラガラと崩れ去ったのだ。
マリオンは理性的な人間だった。
彼女は言われる。
「いつも感情を抑え、冷たい頭脳だけの人間。そんな人間から人は離れていく」
マリオンは理性的であるが故に、情熱的なことに尻込みしてしまう人間だった。
情熱的、感情的になることで自分が失われてしまうことを怖れ、それらから逃げて来た人間だった。
マリオンはある作家から情熱的な求婚をされていたが、結局、現在の医者の夫を選んだ。
辛辣な人生がむき出しにされて、マリオンはその人生の選択が間違っていたのではないかと思う。
そして、打ちのめされた彼女は、その作家が彼女のことをモデルにして書いたという小説を読み始める。
その小説にはこう書かれていた。
「彼女は激しい情熱を持った女性だった。その抑圧を解きさえすれば」
自分を愛し、自分を理解してくれていた存在がいたことに少し救われるマリオン。
マリオンは浮気をした夫と離婚する。
情熱的な自分を、作品タイトルである「私の中のもうひとりの私」を認識した彼女がその後、どの様な人生を送ったかは描かれていない。
★研究ポイント
まず、自分と自分の置かれた現実を厳しく見据えよと語るウディ・アレン。
それはまた別の空虚であるかもしれないが。
理性的であることと感情的・情熱的であることとは?