平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

アルフレッド・ヒッチコック

2006年03月05日 | 監督・俳優・歌手・芸人
BBC製作のドキュメンタリー「巨匠アルフレッド・ヒッチコック」を見た。

ヒッチコックは「劣等感」のかたまりだった。
「劣等感」があったため、彼は映画監督としての名声を求めた。
彼が自分の映画に出るのは、これが自分の作品であることを顕示するためである。
美しい「俳優」へのコンプレックスもあって1シーンの登場であるが、彼はスクリーンに出たがった。

TV番組「ヒッチコック劇場」を作ったのは、名声のためだったという。
現に彼はこの番組で若者に支持された。
「サイコ」は古い批評家には非難され、配給会社からは客が入らないと判断されたが、「ヒッチコック劇場」を見ていた若者からは、自分たちの映画として支持されたらしい。
彼は「ヒッチコック劇場」で自分を道化にして登場したが、それは「劣等感」の裏返しであった。コンプレックスのある人間は道化を演じる。どうせイイ男は演じられないし。

彼の「劣等感」は女性に向けられた。
自分に見向きもしない美しい女性への復讐。

「俳優に演技力はいらない」というのはヒッチコックの名言だが、「サイコ」のシャワーシーン。
あれこそ演技はいらない。カットのモンタージュによって殺人シーンを描いていく。現にこのシーンで殺されたジャネット・リーは「あのシーンで自分は何を演じているのかわからなかった」と語っている。

「鳥」ではこんな撮影の仕方をしたという。
「箱の中に女優を入れ、鳥を次々と投げつけたのだ」という。
当然、女優は手で鳥を追い払う。
これこそ迫真の演技というわけだ。

ヒッチコックにとって女優は人間ではない。
「物」だ。
それは自分を相手にしなかった美しい女たちへの復讐だ。

また、ヒッチコックは自分だけの女優を作ろうとしたという。
自分の作品だけに出て自分の意のままに使える女優だ。
ヒッチコックは美しい人気女優を撮ってきたが、彼女らは自分の要求どおり演じてくれるわけではない。
それに不満を感じて、自分だけの女優を望んだらしいのだが、ここに彼の強い独占欲を感じる。

また、彼は子供の様であった。
彼の1シーンの映画出演は悪戯・遊び心の現れでもある。
彼の映画はプラモデルを作るような感じで撮られ、「どうだ、すごい映像だろう」と子供が自分の作品を見せつけている様だ。

最後にまとめよう。
彼は「サイコ」の予告で自らが出演して言う。
「母親に抑圧された少年はどの様な行動を取るか……」
「母親に抑圧された少年」というせりふは「女性に抑圧された少年」と言い換えてもいい。
「女性に抑圧された少年」が、思い描いた作品がヒッチコックの作品なのである。

★研究ポイント
 強い欲望が作品に昇華する。
 作品は作家の人間性と切り離せない。
 また、そうでなければ本物ではない。

 ヒッチコックの言葉。
 次にどんな映画を撮りたいかと訊かれ
「暴力・殺人・セックスが絵画のように散りばめられた作品。見事な衣装、見事なカット、気の利いたショックのある作品」
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24 シーズン2 キャラクター造型

2006年03月05日 | テレビドラマ(海外)
第18話・19話を素材に「大統領・デビット・パーマー」のことを書く。
すぐれたリーダとはこういうものだ。

彼は他人の意見は聞くが決して付和雷同しない。
国家の危機、第3次世界大戦が起こる可能性。
そんな中、大統領は音声データはねつ造かもしれないというジャックの言葉を信じている。
彼の部下たちは様々な思惑を持ち、それぞれに意見を具申してくる。

部下「ジャック・バウアーを信用しすぎるのでは?」
大統領「ジャックが正しければ、我々は歴史に汚点を残すことになる」

中東を攻撃する爆撃機が飛んでいる。
ジャックから分析はまだだが、証拠の品が手に入ったと連絡が入る。
大統領は攻撃をためらうが、部下は諫める。
それに対して大統領は言う。
「決断力を示すために戦争をするというのか?」
大統領が作戦中止を決断すると「これは奇襲だから意味があるんです。このまま攻撃をせずに戦いに臨んだ場合、数万のアメリカ兵の命が失われます。作戦を中止すると立て直すのに時間がかかります」と部下は言うが、彼は動じない。
街ではイスラム系のアメリカ人を狙った暴動が起き、大統領をさらに苦しめるが、彼は動じない。

見ている我々は、音声データがねつ造であることを知っているから、こうした大統領の姿が頼もしく見える。
これで彼が付和雷同したり、視聴者が望むことと正反対の間違った判断をしていたら、彼は大バカ者になる。しかし、彼は視聴者の知っている事実(「音声データはねつ造」に基づいて判断しているからカッコイイ。
見事なキャラクター作りだ。

一方、マイクら大統領側近はこうした大統領の判断を決断力がないと考える。
副大統領プレスコットは大統領を追い落として、権力を握ろうとする。
これが後のドラマに繋がる。

大統領まわりでは、こんな人物もいた。
シークレットサービスのアーロン。
地味だが見事なバイプレイヤーだ。
20年大統領のシークレットサービスを務め、様々な大統領を守ってきた。
アーロンは大統領のパーマーに副大統領の不穏な動きに関して意見を求められるが、政治的な意見は自分の領域ではないとして意見は言わない。
パーマーにそれでも意見を求められてやっと言う。
「あなたの直感は鋭い。私はあなたを信じます」
シークレットサービスという職務に忠実な彼だが、22話ではパーマーのためにその領域を越える。
大統領の地位を奪われ拘束されたパーマーのために携帯電話を用意するのだ。
パーマーはこれでジャックと連絡をとる。
結果、見つかってアーロンは大統領のシークレットサービスの職務を剥奪されるが、「気にしないで下さい。大統領」と言って連行される。

★研究ポイント
 キャラクターの作り方
 キャラクター造型

★追記
 第24話でパーマーは閣僚たちに言う。
「リーダには人智を越えた忍耐力が必要だ。武力行使は最後の手段だ」
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