平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

レ・ミゼラブル 第3話

2006年03月17日 | テレビドラマ(海外)
レ・ミゼラブル 第3話は苦悩の時代。

あわれな人々を想う「愛の人」ジャン・バルジャンが父親としてのエゴに悩む。

バルジャンはコゼットのために生きている。
本を読むのはコゼットと話をするため。
現在の政治体制や監獄制度を憎み、自分が監獄にいたことを誇りに思っているが、コゼットに知られてしまうことは恥ずかしい。

だが、コゼットも親離れの時期が来ている。
マリウスに恋をする。
ジャベールに嗅ぎつけられ、コゼットを伴いイギリスに急遽引っ越すことにしたバルジャン。だが、コゼットは行きたくないと言う。病気で倒れてしまう。
看病をするバルジャンはコゼットの部屋でマリウスに宛てた手紙を見る。
「最愛なる人へ。最悪に事態になりそうです」
最悪の事態とはイギリスに行くこと。
最愛の人とはバルジャンのことではない。
「相手は誰だ?!」と憤慨し、バルジャンは自分の想いを召使いに吐露する。
「コゼットがいなくなったら私は死んでしまうかもしれない。私のボロボロの人生でコゼットは唯一の私の輝きなのだ」
バルジャンは、そこへやって来たコゼットと話す。
「パパがコゼットのことを考えていた時、コゼットは別のことを考えていたのかい?おまえの心を奪ったのは誰だ?」
コゼットは応える。
「彼が奪ったんじゃない。私が与えたの。愛がいけないなんてパパは言えない。パパは愛の人だから」
それに対してバルジャンは否定する。
「20歳の私は憎しみだけだった」

コゼットに対する愛がエゴに変わり、バルジャンの心は嵐のように葛藤する。
エゴは心の平安を奪う。
折しも革命が起きる。
エポリーヌに「コゼットは引っ越した」と嘘を言われ絶望したマリウスは革命に身を投じる。
マリウスがカフェ・ミューザンでバリケードを作って闘っているという話を聞き、
バルジャンはミューザンへ向かう。
「都合がいい。どさくさに紛れてやつを殺せる」と言って。

バルジャンの心がいかに解放されるのか?
これが物語のラストになる。

また、この第3話ではもうひとつの哀しい愛が描かれる。
エポリーヌだ。
彼女はコゼットはマリウスを捨ててイギリスに行ったと嘘をついた。
マリウスにコゼットを諦めさせるために。
しかし、エポリーヌは政府の兵士にバリケードの中で撃たれてしまう。
死の床にありマリウスに見守られながらエポリーヌは自分の気持ちを伝える。
「少しは私を見てくれた?」
マリウスはエポリーヌがもうじき死ぬこともあり、優しい言葉をかけると、
エポリーヌは言う。
「あなたは知らないのね。人の悪意というものを」
そして、エポリーヌの父親テナルディがワーテルローでマリウスの父親を助けたのは嘘で、実は時計を奪うためであったことを語り、コゼットが引っ越したと言ったことは嘘であることを告げる。そして言う。
「あなたもこの戦いで死ぬ。あなたが死ねば安心だわ。あなたが死ねば、あなたはあの子を抱けないから。ああ、私は何を望んでいたのかしら。あなたの幸せ?あなたの不幸?」
血を吐きながら彼女はさらに言う。
「ここにいて。ひとりで死ぬのは怖い。私が死んだらキスをしてほしい」
彼女は目を閉じ、マリウスはキスをする。

「ああ、私は何を望んでいたのかしら。あなたの幸せ?あなたの不幸?」はそのままバルジャンの葛藤にも繋がる。
マリウスをコゼットから離そうとすること、殺そうとすることに対してバルジャンは思う。
「自分は何を望んでいるのだろう?コゼットの幸せか?不幸か?」
そして、この心の苦しみはやはり死によって解放される。

 バルジャンとエポリーヌ。
 このふたつの葛藤する愛の物語が奏でられ、大きく揺さぶる。
 これがひとつだけだったら、これほどの衝撃にはならないだろう。

 また激しい愛は苦しく、エゴと狂気の面を持ち合わせていることを教えてくれる。


★研究ポイント
 物語の作り方
 ふたつのモチーフが奏でる物語。 
 テーマ
 愛 激しい愛

★追記
 革命をめぐって様々な人々がリアクションする。
 まず、革命前の大学。
 大学教授は、大学に警察が入ろうとするのを抗議する。
 マリウスは革命でなく恋に生きる決心をする。
 これに対してジャベールは言う。
「恋に夢中なら祝福するよ。戦争で子供が減った。結婚を奨励するよ」
 そして革命。
 若者たちはこう言って同志を鼓舞する。
「この店はカフェではない。革命の司令部になるのだ」
 この熱狂に対してジャベールは冷静だ。若者たちの人数を数え
「53人。戦いを放棄しろ。君たちには公正な裁判を受ける権利がある」
 バルジャンはこう言う。
「彼らの思想と行動は共感し尊敬するが、これはジャベールの自分への追及をそらす良い機会だ」
 そして革命が瓦解。
 昼にはパリ中が立ち上がると信じていた若者たちだったが、援軍は来ない。
「市民は共和制を見捨てた」と嘆くがリーダーは言う。
「市民は我々を見捨てても、我々は市民を見捨てない」
 若者はスパイ活動をしていたジャベールを銃で殺そうとするが、バルジャンは止める。
「君たちは死刑執行人ではない。君たちは革命家だ。私が撃とう」

 こうしたリアクションがしっかり描けているから面白い。
コメント
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