平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

医龍 最終回

2006年06月30日 | 職業ドラマ
「医龍」最終回。

  1
 朝田龍太郎(坂口憲二)は最後まで揺るがない男だった。
 その信念の強さが新しいヒーローを作った。
 彼の信念はこう。
「生きようとして戦っている患者がいる限り俺達は戦う」
「死なせて良い患者なんていない。助かる命を助けようとしないのはそれだけで罪だ」
 それは霧島軍司(北村一輝)であっても同じだった。
 困難なバチスタ手術の中、朝田は手術室を抜けて霧島の治療に当たる。
 加藤晶(稲森いずみ)、里原ミキ(水川あさみ)は反対する。
 霧島の命よりバチスタの成功・子供の命の方が重要だからだ。
 晶とミキは揺らいだ。
 しかし朝田の信念は変わらない。
 これで朝田のキャラが引き立つ。 

 また朝田は信念の男であると共にチームを信頼する男だ。
 途中抜けることに対して、朝田は伊集院登(小池徹平)に尋ねる。
 晶の第一助手が務められるかと。
 晶の腕は信頼している。他のチームの人間の腕も。
 残るは伊集院。
 伊集院が「出来る」と言えば、一時現場を任せられる。
 判断を伊集院に任せたのは、朝田が彼を信頼しているからだ。
 葛藤の末、「出来ます」という伊集院。
 これでチームを信頼する男、朝田を描いた。

 テレビドラマでは、視聴者に感情移入してもらうため、主人公の弱さを描くが、この作品ではそれをしなかった。
 朝田はあくまで信念と超一流の技術を持ったスーパーヒーロー。
 仲間を信頼するヒーロー。
 こういう主人公の描き方もあるんだ、と思った。

  2
 さて今回、朝田によって心を解放されたのは霧島。
 晶や荒瀬門次(阿部サダヲ)など、朝田と関わった人間はみんな心を解放されてきた。
 晶は教授戦に勝つために犠牲にした医者の心。
 荒瀬は人殺しの十字架。
 今回は霧島の弱さが吐露された。 
「人は所詮一人だ。人は人とかかわるから孤独を感じるんだ」
 霧島は傷つくのを恐れるあまり、自分の心を閉ざした。
「僕は平凡な人間だ。存在感の薄い人間。僕も彼らのようになれない。そんな凡人だ」
 霧島は自分の非力を認識していた。
 また、朝田らチーム・ドラゴンの人間の「特別な才能」に嫉妬していた。
 そして彼らの強く結びついたチームワークにも。
 朝田たちが持っているものはすべて自分にないもの。
 そんな霧島が勝つためには、政治の力を使うしかない。
 「教授」という権力を持つしかない。
 それが霧島の行動論理だった。 
 彼は朝田に命を助けられ、今までの自分を壊した。
 自分の弱さを認め、「私は……愛してたわ」と言ってくれる存在・晶がいたことを思い出した。
 そしてチームの大切さも学んだ。
 今までの自分から解放された霧島は晶に言う。
「俺もチームを作りたくなった。君が作ったような最高のチームを」

  3
 この物語は
  1.困難な手術
  2.人物の心の解放
  3.教授戦      の3プロットから成り立っている。

 善と悪もはっきりしている。
 この中で一番オイシイキャラはジョーカー鬼頭笙子(夏木マリ)だろう。 

  4
 赤ん坊の手術と霧島の手術ではメリハリを見せた。
 赤ん坊の手術は繊細。
 霧島の手術はワイルド。野戦病院の手術。脳死時間の4分半。
 この見せ方がうまい。

  5
 野口教授(岸部一徳)は最後まで悪だった。
 彼は「君、トムヤンクンが好きだったね」と言われてタイに飛ばされる。
 政治力・権力は砂の上に作られたもの。
 簡単に崩される。
 他人に頼って作られた自分というものは弱いということを教えてくれる。

 大切なのは個人の心。
 これだけは誰にも壊すことができない。

 これが朝田を通して、この物語が一番描きたかったことだろう。
 単純明快・骨太のいいドラマだった。
コメント (2)
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