平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

功名が辻 蝶の夢

2006年06月19日 | 大河ドラマ・時代劇
 第24回「蝶の夢」
 山崎の合戦よりは清洲会議が描かれた。
 そこで繰り広げられたのは、信長の三男・信孝を推す柴田勝家(勝野洋)と信長の嫡孫・三歳の三法師を推す秀吉(柄本明)の駆け引き。
 筆頭家老である勝家に秀吉は面と向かって異を唱えられない。
 腹痛と偽って席を外し、根回しした丹羽長秀(名高達郎)に対応させた。
 これで会議は三法師が織田家の跡取りに決する。
 そして、その間、秀吉は何をしていたか?
 三法師の心を掴もうと躍起になっていた。
 千代(仲間由紀恵)が呼ばれ三法師の心を開かせ、三法師と秀吉を結びつけた。
 その後、評定に戻ってきた秀吉。
 三法師が跡取りにあることが告げられ、やって来た三法師が「筑前!」と言って
秀吉の懐に飛び込む。
 秀吉は三法師を抱き上げ「織田家の跡取り三法師君であらせらるるぞ」と叫び、居並ぶ重臣たちに頭を下げさせる。
 歴史上有名な秀吉の名シーンがかくして相成った。

 この清洲会議での「功名が辻」オリジナルは、千代が三法師の心を開かせたというエピソード。
 三歳とはいえ、さすが信長の孫、気難しそう。
 そんな三法師を信頼させたのは、子供の心を持つ千代であった。
 秀吉のような邪心にはなかなか心を開かない。
 史実の正誤はともかくとして、そういう形で主人公・千代を歴史に関わらせた。

 考えてみると、一豊夫婦は共に心がきれいである。
 一豊(上川隆也)は光秀(坂東三津五郎)への想いから、手柄になるのに光秀の首を取らなかった正直者・律儀者。
 千代もご存じのとおり。三法師のような子供も信頼を寄せる。
 この夫婦には心の曇りがない。

 さて、この心がきれいな夫婦が乱世で生き延びて出世できるのかが、この作品のメインモチーフになる。
 出世とはそれこそ今回秀吉が演じたような、駆け引き・追い落としの世界。
 汚いこと、自分の心に反することに手を染めなければならない。
 例えば、光秀の首を取って手柄とするような。
 それができない一豊が果たして出世できるのか?
 あるいは出世のために今後一豊は汚いことに手を染めるのか?
 ここがこの作者が問いかけていることであるように思える。

 そして、その点では光秀の一豊に語った言葉が重要である。
「生きて乱世の末を見届けられよ」
「どんなことをしても」という言葉もつけ加えられていたように思うが、この言葉は一豊夫婦の心にしっかりと刻みつけられた。
 生き抜くということは、時には自分の意に反して生きなければいけないということ。
 例えば、生き抜くためには黒田官兵衛の息子・松寿丸を斬らなければならなかった。それをしなかった一豊は信長に斬られたり、切腹をすることになっても仕方がなかった。
 あるいは、生き抜くために刀を持って向かってくる子供を斬らねばならない時もあるかもしれない。
 この辺の矛盾を一豊はどう折り合いをつけていくか?
 「功名が辻」の見るべきポイントして留意しておきたい。

★研究ポイント
 テーマ:心に曇りのない夫婦は乱世を生きていけるか?

★追記
  1
 山崎の合戦・清洲会議の他に今回は細川家に嫁いだ光秀の娘・玉(長谷川京子)と織田家をサルの好きにさせてはならぬと言って勝家と再婚した市(大地真央)のエピソードが描かれた。
 いずれも権力闘争の中に巻き込まれた女性の悲劇を描写している。
  2
 光秀が死ぬ時は、濃(和久井映見)が蝶になって光秀の前に現れた。
 ベタな描写だが、悲劇のふたりにこれくらいの救いはほしい。
  3
 ラスト。
 取ってつけたように描かれる一豊の長浜城赴任がなくなったというエピソード。
 これは正直者は権力者に翻弄されるという暗喩であろうか?
 それとも単なるギャグ落ち?
コメント (9)
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