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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

医龍 カルテ8

2006年06月02日 | 職業ドラマ
 荒瀬門次(阿部サダヲ)のキャラクターから物語が作られているから、「医龍」は面白い。

 麻酔論文のためにたくさんの人を殺してきた荒瀬。
 そんな彼をあたたかく見つめてきた山口香(奥菜恵)。
 彼女のいるバアに来ると飲んだくれて寝てしまうだけだが、荒瀬は香に居場所を感じている。
 だが、彼は彼女を愛せないと思っているのだろう。
 なぜなら荒瀬は罪を背負った医者だから。
 香との軽口と彼女の作ってくれるだし巻きたまごが荒瀬の救いだ。

 こんな荒瀬のキャラクターを踏まえて、ドラマは展開する。
 香が強盗に打たれて瀕死の重傷を負うのだ。

 そんな状況での荒瀬のリアクションと行動。
1.止血
 小石をベルトで止めて応急の止血をする。

2.心停止
 しかし、救急車の中で香は瀕死の状態。
 荒瀬は言う。
「今年は海行こうな。今年こそつき合ってもらうからな。ビキニも買ってやる!ホテルはスィートだよな。金なら腐るほどあるからよ!たまにはつき合ってやるよ!
いつもつき合ってくれてるもんな!俺のくだらねぇ話、いつも笑って聞いてくれてるもんな」
 そして心停止寸前。
 荒瀬にメッセージを伝えようとする香。
 伊集院登(小池徹平)はそのメッセージを聞いてあげるように言うが、荒瀬は本音を洩らす。
「おまえなら俺みたいな人をいっぱい殺してきた医者に最期を見取ってほしいか?俺にその資格がないのはおまえが一番良く知ってるだろ!ここから先はおまえみたいな綺麗な医者しか歩けないんだよ!」
 そして心停止。

3.手術
 病院に着くと朝田(坂口憲二)。
 あきらめてはいない。
「勝手に諦めるな!脳がやられるまで4分30秒ある!」
 脚の銃創の処置には鬼頭笙子(夏木マリ)。 
 荒瀬はまだ香に素直になれない。
 彼が背負っている罪はそれほど重いのだ。
 しかし、伊集院に背中を押される。
「もし僕に腕があったらあなたみたいな人に頭をさげません。気持ちだけで患者が救えるなら頼むもんですか」
 手術室に入る荒瀬。

4,手術成功
 朝田と荒瀬の完璧な連携。
「おまえじゃ朝田に釣り合わねぇ。お立ち台~!」
「俺が全身管理をする以上万に一つも間違いはない!その代わり必ず助けろ!」
「久しぶりに全力でやらせてもらえるって事か!」
 荒瀬が的確な全身管理をしてくれるおかげで朝田は執刀だけに集中出来る。
 手術は成功する。

5.認め合う男たち。
 朝田と荒瀬はすれ違い様に話す。
「俺について来れた麻酔医はおまえが始めてだ」
「俺について来れた外科医もおまえが始めてだ。バチスタが決まったら知らせろ。
ギャラは今回の手術代だ」
 ふたりは決して握手はしない。
 しかし一流の技術と患者に対する想いを持っているお互いを認め合っている。
 朝田は荒瀬の隠していた気持ちも理解しているようだ。
 真っ白で正義感溢れる伊集院に言う。
「あいつは責められる為に今でも悪党をやってる。自分の犯した罪は一生許されない事をあいつは知ってる。だからあいつは他の道を選ばなかった。だけどおまえは真っ白なままでいろ。今のおまえに責められる事をあいつは望んでる」

 今回の話はドラマ作りのお手本。

 起……荒瀬のキャラクターとこれから事件に関わる人物(かおり)の関係を描く。
  ※これをドラマの1/3の時間を使ってじっくり描いた。
 承1…事件発生(コンビニ前)。止血。
 承2…荒瀬の葛藤(救急車)。自分は香にふさわしくない。
 承3…荒瀬の葛藤(手術室前)。  〃
  ※なかなか動かない荒瀬に視聴者もハラハラドキドキ!
 転……荒瀬の手術参加。
 結……認め合う朝田と荒瀬。

★研究ポイント
 構成の仕方:起承転結の実際。
 この起承転結のメインの流れに鬼頭、伊集院らを絡ませ、今後の伏線(教授戦の野口(岸部一徳)の思惑)を置いている。
 人の死が関わるドラマだからサスペンスもある。(小石を使った応急処置シーン、手術シーン)。
 山と谷もある。 
 応急処置~心停止~手術の流れは、山~谷~山の起伏だ。だからワクワクする。

★キャラクター研究:山口香
 荒瀬をあたたかく見つめている女性。
 母親のようにダメなところもひっくるめて。
 ただし、ベタベタした甘さはない。
 突き放すことが心に傷を負った彼への正しい接し方だとわかっている。
 香は決して荒瀬のことを「先生」と呼ばない。
 人を殺した荒瀬にとってそう言われることが一番嫌なことを知っているから。
 彼女と荒瀬を結びつけているのは、香の作るだし巻きたまご。
 荒瀬のからだを気遣って作っただし巻きたまご。
 香の想いの象徴。荒瀬はそれを「まずい」と言って受け入れた。
 この大人の距離感。
 「クロサギ」の氷柱と比べてみると面白い。

★名シーン
 鬼頭登場。
 脚の銃創手術を誰が行うか?
 朝田は言う。
「いるだろ、ひとり。ERの本場アメリカ帰りのスペシャリストが」
 スローモーションで廊下を歩いてくる鬼頭。
 いよっ!千両役者!
 かっこいい。
 そして手術。
 鬼頭は言う。
「あたしにつりあう執刀医かどうか拝見させてもらうわ」
 かっこよすぎ!
※朝田といい鬼頭といい、このドラマの医者はどうしてスローモーションで歩いてくるのだろう。それに、どうして一言多いんだろう。
コメント (4)
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