1
スポーツ映画は大好きだ。
この作品「GOAL!」は数あるスポーツ映画の中でも異彩を放つ。
主人公が強くなるために努力する過程をひたむきに描いているからだ。
主人公が強くなろうと努力する理由・動機はいろいろある。
「ロッキー」は恋人のため家族のため。
「炎のランナー」は神のため、差別を克服するため。
しかし、この「GAOL!」の主人公サンティアゴ・ムネス(クノ・ベッカー)は違う。
1.プロへの憧れ(好きなサッカーでメシが食いたい)。
2.自分の才能を信じ、開花させたい。
このふたつを動機にして、主人公は試練と戦っていく。
いわば自分との戦いのみ。
この戦いはいつでも撤退は可能だ。
自分に才能がなかったと適当に折り合いをつけて、アメリカに戻ればいい。
取り巻く人たちも彼を応援はしているが、たとえ彼が挫折しても受け入れる気持ちを持っている。
「がんばったわね」「やはり才能がなかったんだ」「これからは地道に働け」と言われるくらいである。
実にリアル。サンティアゴは我々と同じ等身大の人間だ。
だから彼が自分に負けずに栄冠を勝ち取った時、観客は拍手を送る。
同時に「誰かのために、誰かとの幸せのために戦うヒーロー」は色褪せて古くなってしまった。
スポーツヒーローも自分との戦いをテーマにする時代となった。
「GOAL!」はその点で新しい。
2
サンティアゴの戦いは自分との戦いだ。
その戦いを支えてくれる人たちがいる。
サンティアゴを信じている人たちだ。
まずは祖母のメルセデス(ミリアム・コロン)。
彼女は孫たちが夢を実現することに助力する。
彼女はイギリス行きの切符をサンティアゴに渡す。
メルセデスはサンティアゴが成功することを信じているのだ。
ふたりめはグレン・フォイ(スティーブン・ディレイン)。
彼はサンティアゴをスカウトし、チームのトライアルを受けるように言う。
ぬかるみ、時差などでサンティアゴはトライアルに失敗するが、それでも彼の才能を信じてチームに食い下がってくれる。
一方、サンティアゴを信じない人もいる。
それはサンティアゴの父親ヘルマン(トニー・プラマー)だ。
ヘルマンは地道にコツコツと働くことを信じている男。
夢を見てがんばることなど浮ついたことだと思っている。
おそらくアメリカにやって来た頃の彼は大きな夢を抱いていたのだろう。
それが無惨に裏切られた。アメリカにあったのは貧乏な生活。
だからサンティアゴがイングランドに行くことに反対する。
また、サンティアゴの恋人、クラブチームの看護士ロズ・ハーミング(アンナ・フリエル)の立場は微妙だ。
もちろん恋人にサッカー選手として活躍してほしいとは思っているが、成功して自分が捨てられることを怖れている。
非常に微妙な立場だ。
物語はこれらの人とサンティアゴとの関わりで進行していく。
まず信じる人に対して、サンティアゴはその信頼に応えたいと頑張る。
力が足りずチームをクビになった時は「信じていた人たちを裏切ってしまった」とサンティアゴは悩む。
一方、信じていない父親に対しては、反発半分・哀しさ半分。
父親を見返したくて、父親に喜んでもらいたくて頑張る。
そして恋人に対しては、その応援と彼女を悲しませる裏切り行為(浮気)はしたくないと思う。
これが主人公を取り巻く人間関係。
これらの人に応えようとしながら、サンティアゴは自分を信じ強くなっていく。
これが物語の基本モチーフだ。
3
この作品は夢に向かって頑張っている人にはお勧めの映画。
夢の実現とは他ならぬ自分との戦いなのだと教えてくれる。
エイドリアンがいなければロッキーにはなれない。
神への信仰や差別がなければ「炎のランナー」のリデルたちにはなれない。
だが、サンティアゴは自分たちと同じ何も持っていない人間。何も抱えていない人間。
だから勇気づけられる。
ラスト、サンティアゴはメンタルがこんなに強くなる。
父親が心臓マヒで死んだ時、彼はアメリカに帰らずこう監督に言う。
「このままアメリカに帰ったら、父親の死を理由に自分を甘やかすことになる」
試合で結果を残せなかったら、弱い自分は父親の死をその言い訳にしてしまうと言うのだ。
彼は言い訳できない状況に自分を追い込んだ。
また、こうも言う。
「監督にダメだと言われても、何度でも食い下がる」
そんな強くなったサンティアゴに歓喜の時はすぐにやって来た。
チームはイングランドのプレミアリーグで優勝。
名アシストでチームに1点を与え、決勝点を自分のシュートで生み出した。
そしてこんなことを聞く。
亡くなった父親が彼の前の試合をテレビで見て、喜んでいたというのだ。
嬉しいサンティアゴ。
父親に認められることが彼の目標のひとつでもあったから、それは何よりも嬉しいことだったろう。
★研究ポイント
物語の作り方
自分を信じるか否か。その孤独な戦い。
孤独な戦いに勝利したものだけが得られる栄光。
スポーツ映画は大好きだ。
この作品「GOAL!」は数あるスポーツ映画の中でも異彩を放つ。
主人公が強くなるために努力する過程をひたむきに描いているからだ。
主人公が強くなろうと努力する理由・動機はいろいろある。
「ロッキー」は恋人のため家族のため。
「炎のランナー」は神のため、差別を克服するため。
しかし、この「GAOL!」の主人公サンティアゴ・ムネス(クノ・ベッカー)は違う。
1.プロへの憧れ(好きなサッカーでメシが食いたい)。
2.自分の才能を信じ、開花させたい。
このふたつを動機にして、主人公は試練と戦っていく。
いわば自分との戦いのみ。
この戦いはいつでも撤退は可能だ。
自分に才能がなかったと適当に折り合いをつけて、アメリカに戻ればいい。
取り巻く人たちも彼を応援はしているが、たとえ彼が挫折しても受け入れる気持ちを持っている。
「がんばったわね」「やはり才能がなかったんだ」「これからは地道に働け」と言われるくらいである。
実にリアル。サンティアゴは我々と同じ等身大の人間だ。
だから彼が自分に負けずに栄冠を勝ち取った時、観客は拍手を送る。
同時に「誰かのために、誰かとの幸せのために戦うヒーロー」は色褪せて古くなってしまった。
スポーツヒーローも自分との戦いをテーマにする時代となった。
「GOAL!」はその点で新しい。
2
サンティアゴの戦いは自分との戦いだ。
その戦いを支えてくれる人たちがいる。
サンティアゴを信じている人たちだ。
まずは祖母のメルセデス(ミリアム・コロン)。
彼女は孫たちが夢を実現することに助力する。
彼女はイギリス行きの切符をサンティアゴに渡す。
メルセデスはサンティアゴが成功することを信じているのだ。
ふたりめはグレン・フォイ(スティーブン・ディレイン)。
彼はサンティアゴをスカウトし、チームのトライアルを受けるように言う。
ぬかるみ、時差などでサンティアゴはトライアルに失敗するが、それでも彼の才能を信じてチームに食い下がってくれる。
一方、サンティアゴを信じない人もいる。
それはサンティアゴの父親ヘルマン(トニー・プラマー)だ。
ヘルマンは地道にコツコツと働くことを信じている男。
夢を見てがんばることなど浮ついたことだと思っている。
おそらくアメリカにやって来た頃の彼は大きな夢を抱いていたのだろう。
それが無惨に裏切られた。アメリカにあったのは貧乏な生活。
だからサンティアゴがイングランドに行くことに反対する。
また、サンティアゴの恋人、クラブチームの看護士ロズ・ハーミング(アンナ・フリエル)の立場は微妙だ。
もちろん恋人にサッカー選手として活躍してほしいとは思っているが、成功して自分が捨てられることを怖れている。
非常に微妙な立場だ。
物語はこれらの人とサンティアゴとの関わりで進行していく。
まず信じる人に対して、サンティアゴはその信頼に応えたいと頑張る。
力が足りずチームをクビになった時は「信じていた人たちを裏切ってしまった」とサンティアゴは悩む。
一方、信じていない父親に対しては、反発半分・哀しさ半分。
父親を見返したくて、父親に喜んでもらいたくて頑張る。
そして恋人に対しては、その応援と彼女を悲しませる裏切り行為(浮気)はしたくないと思う。
これが主人公を取り巻く人間関係。
これらの人に応えようとしながら、サンティアゴは自分を信じ強くなっていく。
これが物語の基本モチーフだ。
3
この作品は夢に向かって頑張っている人にはお勧めの映画。
夢の実現とは他ならぬ自分との戦いなのだと教えてくれる。
エイドリアンがいなければロッキーにはなれない。
神への信仰や差別がなければ「炎のランナー」のリデルたちにはなれない。
だが、サンティアゴは自分たちと同じ何も持っていない人間。何も抱えていない人間。
だから勇気づけられる。
ラスト、サンティアゴはメンタルがこんなに強くなる。
父親が心臓マヒで死んだ時、彼はアメリカに帰らずこう監督に言う。
「このままアメリカに帰ったら、父親の死を理由に自分を甘やかすことになる」
試合で結果を残せなかったら、弱い自分は父親の死をその言い訳にしてしまうと言うのだ。
彼は言い訳できない状況に自分を追い込んだ。
また、こうも言う。
「監督にダメだと言われても、何度でも食い下がる」
そんな強くなったサンティアゴに歓喜の時はすぐにやって来た。
チームはイングランドのプレミアリーグで優勝。
名アシストでチームに1点を与え、決勝点を自分のシュートで生み出した。
そしてこんなことを聞く。
亡くなった父親が彼の前の試合をテレビで見て、喜んでいたというのだ。
嬉しいサンティアゴ。
父親に認められることが彼の目標のひとつでもあったから、それは何よりも嬉しいことだったろう。
★研究ポイント
物語の作り方
自分を信じるか否か。その孤独な戦い。
孤独な戦いに勝利したものだけが得られる栄光。