平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

プリズン・ブレイク 第1話

2006年10月06日 | テレビドラマ(海外)
 第1話の作りで面白いのは主人公マイケル・スコフィールドの行動理由が徐々に明らかにされていくところだ。

 冒頭のテンポのいい導入。
 体に刻まれたタトゥ。
 窓に貼られた新聞記事を引きちぎるマイケル。
 銀行強盗、あっさり罪を認める裁判、収監。

 地位も金もあるマイケルがなぜこの様な行動をするのかがわからない。
 それがマイケルのせりふと周囲の人間の語りで明らかになっていく。
 マイケルは兄リンカーンの無実を信じ、脱獄させ、真実を明らかにしようとしているのだ。

 刑務所に入ってからのマイケルの行動にも様々な謎がある。
 排水溝に捨てられる雑誌。
 医務室から捨てられる折り紙。
 第1級糖尿病と偽って、インシュリン注射のため医務室に行く。
 
 これらの行動には脱獄が関連していることがわかる。
 マイケルはこの刑務所の設計に携わった人間で、その構造を熟知しているのだ。
 恐らく捨てられた折り紙は建物の構造、脱獄に関連しているのだろう。

 そして仲間集め。
 マイケルは脱獄後のことも想定して、頼りになりそうな囚人たちに接触している。
 まずは金。
 チャールズ・ウエストモアランドは現金150万ドルを強奪して隠した伝説の犯罪者クーパーではないかと噂されている。刑期は60年。仮釈放が認められるまでは26年。このままでは150万ドルを使うことなく、刑務所で死んでしまう。
 マイケルの脱獄提案に乗ってくるはずだ。
 次に潜伏先。
 ジョン・アブルッチは刑務所内のPI(刑務作業)を取り仕切るマフィアの幹部。刑期は120年。脱走すれば、彼の組織の力を借りて身を隠すことができる。 マイケルは、アブルッチの組織を揺るがす証人フィバナッチの居所を匂わすことで彼に近づき協力させようとしている。

 第1話は人物紹介をしなければならないが、マイケルの目的とリンクさせて、脇キャラを描く手法は見事だ。

 その他にも同時進行で脇キャラが描かれていく。
 フェルナンド・スクレは気のいいマイケルの同房者。恋人マリクルースに夢中で結婚を取りつけるが、ライバルが出現し気が気でない。仮釈放が認められるのは1年4ヶ月後。真面目に服役していれば、望む結婚もできるのだが、ライバルがいるというのが微妙だ。
 ウォーデン刑務所長はある意味、マイケルの味方。
 懲罰よりも更正させることこそが刑務所の在り方という考えの持ち主。
 愛妻へ贈るタージマハルの模型作りをマイケルが行っていることで、マイケルの力になる。今回も独居房入り(独居房に入れられたら兄の死刑に間に合わない)を阻止した。
 その反対の人物もいる。マイケルにとっての天敵。
 ブラッド・ベリック刑務長は看守に楯突く者は許さない権力主義の暴君。一目で他の囚人とは違うマイケルに入所早々目をつけ、目を光らせている。
 そしてサラ・タンクレディ医師。
 人の役に立ちたいという思いから刑務所の専門医として働いているが、フツーの囚人とは明らかに違うマイケルが気になっている。
 彼女はジョーカー。
 マイケルの味方になるか、敵になるか?
 これらの人物造型は的確で、敵・味方・中立含めて、見事な人物配置だ。

 そしてラストのサプライズ。
 マイケルの全身に彫られたタトゥの意味が明らかになる。
 タトゥは刑務所の設計図だった。

 マイケルの行動理由を徐々に明らかにして行きつつ、まわりの人物も描いていく手法は見事。
 ラストサプライズでは、第2話も見たいという気にさせる。

 なお、第1話ではマイケルの兄リンカーンを罪に陥れ、死刑を執行させようとする組織(シークレットサービス)とリンカーンの家族、マイケルを信じる女弁護士のことが同時並行で描かれた。
 リンカーンの死刑執行に反対する司教は組織に揺すられ、それにも応じないと殺されてしまう。
 リンカーンの息子はグレて薬の運び屋をやった。
 女弁護士は、なぜマイケルが刑務所に入ったかを考えている。

 面白い作品を作る重要な要素として、作品の「密度」というものがある。
 この密度という点で「プリズン・ブレイク」はぎっしり詰まっている。
 第1話で描かれた人物は10人あまり。
 どれも的確だ。
 この密度をどう作り出しているかは、考えてみると面白い。
・人物がマイケルに何らかの形で絡んでいる。
・ドラマが主に刑務所で展開される。
・各キャラの心情描写が回を追う事に深くなり、1話で深い追いをしない。
 などがあるだろう。
 刑務所に入るまでをテンポ良く描いたのも、大きな理由だ。

★追記
 リンカーンの死刑執行は30日後。タイムサスペンスもある。

コメント
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