★第2話
マイケルの脱獄計画は進行する。
ベンチのボルトを抜き取り、削って整形する。
医務室に定期的に行くため、糖尿病に見せかける薬を調達する。
脱獄ストーリーにとっては、この「調達」というのは重要なテーマだ。
しかし、兄のリンカーンが言った様に、災厄は黙っていても降りかかる。
黒人対白人の対立。
ティーバックは「恋人」としてマイケルに目をつけた。
囚人たちのボス・アブルッチは、マイケルが居場所を知っている証人の居場所を聞き出すために過激な行動に出ようとする。
人間はマイケルが考えたようには行動しない。
当然、計画はマイケルの考えたとおりに進行しない。
計画の華麗なる遂行と共に主人公を襲う困難。
エンタテインメントの王道だ。
「プリズン・ブレイク」が特異なのは、邪魔する事柄が主人公の計画とは直接関係ないことだ。
「24」であれば、ジャックの捜査を阻止しようとする敵が主な障害になる。
しかし、この作品の場合、まわりの人間はマイケルの脱獄を邪魔するために障害になっているわけではない。別の論理で動き、マイケルの行動を邪魔する。
そんな連中の中で計画を遂行しなければならないマイケル。
彼にとって誰を敵にして誰を味方にするかの判断が重要になる。
黒人対白人の対立では、マイケルは薬を手に入れるために黒人の側に加担した。
暴動の中で殺したのは、ティーバックの愛人。
当然、ティーバックの怒りを買う。
アブルッチはマイケルに証人の居場所を吐かせるために足の指を切断するという行動に出る。
★第3話
第2話では「調達」が重要な要素であることを描かれたが、第3話では「信頼出来る仲間」が重要であることが描かれる。
アブルッチに足の指を切られたマイケル。
しかし、マイケルはアブルッチにやられたことを刑務所側に言わない。
アブルッチは脱獄に必要な人間で、信頼を得ておかなくてはならないからだ。
アブルッチもマイケルのことを見直した様だ。
どうやって脱獄しようとしているかはわからないが、この男は計画遂行に強い信念を持っている。現に暴力には屈しなかった。
アブルッチは歩み寄る。協力を申し出る。
しかし、マイケルは具体的プランを話すことはしない。
アブルッチが信頼に足るかどうかを見極めているのだ。気分で敵になり味方になる男。そんな男は信頼できない。
アブルッチの歩み寄りを通常ならすんなり受け入れる所、この作品の作家はワンクッション置く。実に巧みだ。
同時にマイケルの計画の全貌が視聴者に伝わらない。
視聴者は次回も見ようという気になるという仕掛けだ。
マイケルの「信頼できる仲間」探しは、同室のスクレにも及ぶ。
スクレだけはマイケルの不確定要素だった。
誰と同室になるかわからないからだ。
マイケルはスクレが信頼できる人物かを試す。
携帯電話。刑務所ではもちろん持ち込み厳禁の品をマイケルはスクレにわざと見せる。
スクレの弱点は外にいる恋人。恋人が浮気しないか気が気ではないが、現在電話をすることは禁じられている。携帯のことを刑務所側に売れば、電話ができるようになるかもしれない。
果たしてスクレは刑務所側に売らなかった。その代わり、マイケルの携帯で自由に電話をかけさせろと言う。
しかし、スクレが携帯だと思っていた物は実は石鹸で作った物。
打算的ではあるが、スクレが簡単に人を売るような人間でないことを知るマイケル。脱獄のこと打ち明けるが、スクレは巻き込まれたくないと言って拒絶した。
マイケルと同じ房では嫌だと言い、別の房に移動してしまった。
スクレは弱さを持った不安定な人間だった。
そして、この移動はマイケルにも打撃だった。
脱獄はマイケルの房から行うもので、同室の人間の協力は不可欠のものだったらしい。
スクレの代わりにやって来た男は、精神科房にいたヘイワイヤー。
彼の心の中が読めない。
おまけに神経障害で夜は一睡もしないという変わり者だった。
アメリカのドラマ作家は、この様に主人公に困難を与えるのがうまい。
第2話では「物」。
第3話では「人」。
刑務所という設定も上手く使っている。
刑務所なら「物」は簡単に調達できないし、「人」はマフィアから、性犯罪者、こそ泥、サイコなやつまで、いろいろな人間がいるからだ。
★ディティルにも様々な工夫がある。
・マイケルをつけ狙うティーバックと手を組もうとするアブルッチ。
マイケル危機一髪。
しかしアブルッチは逆にティーバックを痛ぶった。
自分がマイケルの仲間であることを示すために。
・シークレットサービスのケラーマンは、リンカーン無罪の証人となる黒人女性を拉致し、同僚の捜査官に殺すよう指示する。
同僚はそこまでするんですか?とビビッている。
黒人女性は同僚捜査官の隙を見て脱出。
これはもしかして逃げ切れるかと思わせておいて、ケラーマンが殺してしまう。
同じ人を殺すのでも、普通に撃って殺すのと、この様に殺すのでは大きな違いだ。
実によくシナリオが練り込まれている。
マイケルの脱獄計画は進行する。
ベンチのボルトを抜き取り、削って整形する。
医務室に定期的に行くため、糖尿病に見せかける薬を調達する。
脱獄ストーリーにとっては、この「調達」というのは重要なテーマだ。
しかし、兄のリンカーンが言った様に、災厄は黙っていても降りかかる。
黒人対白人の対立。
ティーバックは「恋人」としてマイケルに目をつけた。
囚人たちのボス・アブルッチは、マイケルが居場所を知っている証人の居場所を聞き出すために過激な行動に出ようとする。
人間はマイケルが考えたようには行動しない。
当然、計画はマイケルの考えたとおりに進行しない。
計画の華麗なる遂行と共に主人公を襲う困難。
エンタテインメントの王道だ。
「プリズン・ブレイク」が特異なのは、邪魔する事柄が主人公の計画とは直接関係ないことだ。
「24」であれば、ジャックの捜査を阻止しようとする敵が主な障害になる。
しかし、この作品の場合、まわりの人間はマイケルの脱獄を邪魔するために障害になっているわけではない。別の論理で動き、マイケルの行動を邪魔する。
そんな連中の中で計画を遂行しなければならないマイケル。
彼にとって誰を敵にして誰を味方にするかの判断が重要になる。
黒人対白人の対立では、マイケルは薬を手に入れるために黒人の側に加担した。
暴動の中で殺したのは、ティーバックの愛人。
当然、ティーバックの怒りを買う。
アブルッチはマイケルに証人の居場所を吐かせるために足の指を切断するという行動に出る。
★第3話
第2話では「調達」が重要な要素であることを描かれたが、第3話では「信頼出来る仲間」が重要であることが描かれる。
アブルッチに足の指を切られたマイケル。
しかし、マイケルはアブルッチにやられたことを刑務所側に言わない。
アブルッチは脱獄に必要な人間で、信頼を得ておかなくてはならないからだ。
アブルッチもマイケルのことを見直した様だ。
どうやって脱獄しようとしているかはわからないが、この男は計画遂行に強い信念を持っている。現に暴力には屈しなかった。
アブルッチは歩み寄る。協力を申し出る。
しかし、マイケルは具体的プランを話すことはしない。
アブルッチが信頼に足るかどうかを見極めているのだ。気分で敵になり味方になる男。そんな男は信頼できない。
アブルッチの歩み寄りを通常ならすんなり受け入れる所、この作品の作家はワンクッション置く。実に巧みだ。
同時にマイケルの計画の全貌が視聴者に伝わらない。
視聴者は次回も見ようという気になるという仕掛けだ。
マイケルの「信頼できる仲間」探しは、同室のスクレにも及ぶ。
スクレだけはマイケルの不確定要素だった。
誰と同室になるかわからないからだ。
マイケルはスクレが信頼できる人物かを試す。
携帯電話。刑務所ではもちろん持ち込み厳禁の品をマイケルはスクレにわざと見せる。
スクレの弱点は外にいる恋人。恋人が浮気しないか気が気ではないが、現在電話をすることは禁じられている。携帯のことを刑務所側に売れば、電話ができるようになるかもしれない。
果たしてスクレは刑務所側に売らなかった。その代わり、マイケルの携帯で自由に電話をかけさせろと言う。
しかし、スクレが携帯だと思っていた物は実は石鹸で作った物。
打算的ではあるが、スクレが簡単に人を売るような人間でないことを知るマイケル。脱獄のこと打ち明けるが、スクレは巻き込まれたくないと言って拒絶した。
マイケルと同じ房では嫌だと言い、別の房に移動してしまった。
スクレは弱さを持った不安定な人間だった。
そして、この移動はマイケルにも打撃だった。
脱獄はマイケルの房から行うもので、同室の人間の協力は不可欠のものだったらしい。
スクレの代わりにやって来た男は、精神科房にいたヘイワイヤー。
彼の心の中が読めない。
おまけに神経障害で夜は一睡もしないという変わり者だった。
アメリカのドラマ作家は、この様に主人公に困難を与えるのがうまい。
第2話では「物」。
第3話では「人」。
刑務所という設定も上手く使っている。
刑務所なら「物」は簡単に調達できないし、「人」はマフィアから、性犯罪者、こそ泥、サイコなやつまで、いろいろな人間がいるからだ。
★ディティルにも様々な工夫がある。
・マイケルをつけ狙うティーバックと手を組もうとするアブルッチ。
マイケル危機一髪。
しかしアブルッチは逆にティーバックを痛ぶった。
自分がマイケルの仲間であることを示すために。
・シークレットサービスのケラーマンは、リンカーン無罪の証人となる黒人女性を拉致し、同僚の捜査官に殺すよう指示する。
同僚はそこまでするんですか?とビビッている。
黒人女性は同僚捜査官の隙を見て脱出。
これはもしかして逃げ切れるかと思わせておいて、ケラーマンが殺してしまう。
同じ人を殺すのでも、普通に撃って殺すのと、この様に殺すのでは大きな違いだ。
実によくシナリオが練り込まれている。