平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

インサイドマン

2006年10月27日 | 洋画
 「血の流れるところで儲けるやつがいる」
 この作品、これに尽きる。

 マンハッタン信託銀行に強盗に入ったダルトンが狙うのは、ある隠し金庫のみ。
 これは銀行の会長のある物が入っている金庫。
 会長が「血の流れるところで儲けた」証拠になるものだ。
 盗まれたとしても公に出来ない。
 ダルトン以外の強盗たちは、人質に自分たちと同じ服装をさせ、警官隊が突入すると、人質たちといっしょに逃げる。
 逃げた人質たちと犯人は警察の尋問を受けるが、誰が犯人であるか、わからないから大丈夫という仕掛け。
 おまけに盗まれたものがないのだから、警察の追及も積極的でない。
 これがダルトンの完全犯罪。
 ただ、ダルトンは隠し金庫にあるものを持ち出さなくてはならないので、ほとぼりが覚めるまで銀行のある場所に隠れている。

 そして、こうした場を利用して儲ける奴がさらにいる。
 ここが、この作品の描きたいところだろう。

 ジョディ・フォスターの演じるヤリ手弁護士は、銀行会長の依頼を受け、隠し金庫にあるものを奪取するように指示される。
 これはダルトンが持ち出したのだから表に出ることないと報告して、報酬を得る。
 デンゼル・ワシントン演じる捜査官フレイジャーは隠し金庫の謎に気づく。
 ダルトンは悪戯で、会長が公にされては困る物をすべて持ち出さなかったから、それをフレイジャーは手に入れる。
 それをどこに持っていくか?
 フレイジャーは女弁護士のもとに持っていって、警察での出世を約束させた。

 描かれているのは、したたかな人間たちである。
 映画で描かれるのは、善良で正義感溢れる人間たちばかりではない。
 場を利用してしたたかに生きていくやつも描く。
 青臭くない大人のドラマだ。
 これらの行為によって、誰も傷つく者がいないのが見事だ。
 会長は証拠隠滅ができた。
 ダルトンは隠し金庫の中の物で金を得る。
 弁護士は報酬、フレイジャーは出世。
 ダルトンの強盗は華麗だが、むしろ「完全犯罪」とは、誰も傷つくものがない状況のことをいうのであろう。

★追記
 解放した人質が持っていた看板。
 この看板の中に実は盗聴器が入っている。
 これで警察の状況は筒抜け。
 警察の突入も事前に察知でき、強盗たちは人質たちといっしょに逃げられた。

 ラスト、ダルトンとフレイジャーがすれ違うシーンがある。
 そこである物をフレイジャーのポケットに入れるダルトン。
 フレイジャーは家に帰り、ポケットの中の物を見て、すれ違ったあいつが犯人だったのかとニヤリとする。
 華麗なワンシーンだ。

コメント
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