スウェーデンでの実話を基にして作られたフランス映画。
売れない役者のエチエンヌ(カド・メラッド)は、刑務所の囚人たちの更生プログラムとしての演技指導を頼まれる。
殺人、窃盗、麻薬密売など様々な罪を犯した受刑者たちは、文盲、ムスリム、アフリカ、ロシア出身者もいたりとてんでバラバラ。
エチエンヌは「見かけないけど、あんた売れてる役者?」「売れてたらこんなとこ来ねえよな」などとバカにされる始末。

彼が選んだ演劇は、不条理劇として名高い、ベケットの「ゴドーを待ちながら」。
難しい演目だが、常に不条理な環境にいて、常に何かを待っている囚人たちに合うと考えたのです。
全くまとまりのない、自分勝手な囚人たちに手を焼きながら、発声からの指導を始める。
そして彼らの演劇は徐々に認められ、地方公演の誘いがかかるようになるのです。
制限付きとはいえ、塀の外に出られるというので彼らは大喜び。
遂にはパリのオデオン座での公演が決定するのです。
その日のオデオン座の観客席には、刑務所所長、判事や法務大臣まで臨席。
満を持して幕が上がるが…

バラバラだった囚人たちが、一つの目標に向かって力を合わせる。
売れない俳優で人生にも行き詰っていたエチエンヌが、囚人に指導することで演劇の素晴らしさを再認識する。
いつしか彼らの間に友情が生まれて…という、成長と再生の物語かと思いきや、最後にあっと足を掬われるのです。
いや、これはないでしょう!?と叫びたくなる。
あのラストにアプローズ(拍手喝采)を贈るフランス人の感覚は、日本人の私にはちょっと理解できないと思ってしまいました。
原題は「Un Triomphe」、ある勝利といった意味のようです。
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