簡単に言えば、美女ロジーナをめぐる彼女の後見人の太っちょの医者バルトロと
ダンディな伯爵との、恋の駆け引き。
それを何でも屋の床屋フィガロが取り持ち、そこに音楽教師、大勢の警察官、町の人々が加わって繰り広げられる
騒々しいまでのロッシーニのドタバタ喜劇です。
派手派手しい原色の内装の家を舞台に、肉欲あり、金銭欲あり、騙し合いあり、
まあ滑稽なまでの人間たちの絡み合いが。
このバルトロという医者が、裕福なくせに姪のロジーナを我が物にしようと
館に閉じ込める腹黒い奴なのですが、やることなすことマヌケで笑える。
この滑稽な男性低音役をバッソ・ブッフォと呼び、
イタリアの喜劇オペラでは不可欠な役割なのだそうです。
滑稽ではあるが、バルトロの猛烈な早口の歌には超絶技巧が要求されるのだとか。
まあとにもかくにも、退屈する暇のない、賑やかな舞台でした。
その前日観た能楽「無明怨念」との、なんという違い。
幕間を入れてどちらも3時間半。
人間の体を使って舞台で表現するという点では同じなのですが…
ハード面について言えば
新国立劇場の「セビリアの理髪師」は上演初日、しかも日曜だったこともあり、
おめかしした人も多く、ロビーには大きくきらびやかなクリスマスツリー。
幕間には、シャンパンやワインを片手に談笑する人たち。
水道橋の宝生能楽堂では
京都「はやしや」の釣鐘饅頭とほうじ茶。
ロビーには「桜」の日本画。
年齢層が高い点というではどちらも同じ。
あまりにも対照的な二つの舞台を続けて観るという
中々貴重な体験をした週末でした。