この感想はあくまでも、「子どもの頃に原作に強く思い入れがあった」人間の
非常に偏った感想です。
この作品を、客観的に冷静に観ることなど、私には到底できません。
「子どもは純粋で天使だ」などと言うつもりはありません。
私自身の幼い頃を思い返しても、ワガママであったり自分勝手であったり
(大人は一応それを隠そうとするが、隠そうともしない、それが子どもであるのだから)
恥ずかしくなるようなシーンがいくつも思い浮かびます。
しかし、特に自分の息子たちの幼い頃を振り返って思うことですが
「子どもには純粋で天使のような一面がある」
これは紛れもない真実です。
そして「星の王子さま」という本は、その美しい面だけを大事に掬い取って
そういう面を持ったかつて子どもであった、大人に捧げられた本であると思うのです。
子どもであった私は、この本が本当に好きだった。
「ゾウを飲み込んだウワバミ」の絵も
「元気でちっぽけで箱の中で眠っている」羊の絵も
「一日に四十四回も入日を眺めるくらい悲しかった」王子さまも
そして「友だちになったから、この世で一匹しかいないキツネ」も
「守ってあげると約束してぼくのものとなった、たった一つのバラの花」も。
大人となった今、この原作を読み、映画を観ると
どの言葉にも意味があり、どの言葉もがメタファのように思えてくる。
それはそれで悲しいことです。
「夜になったら、星をながめておくれよ。
ぼくんちは、とてもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか
きみに見せるわけにはいかないんだ。
だけど、そのほうがいいよ。
きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだって思って眺めるからね。
すると、きみは、どの星も、ながめるのが好きになるよ」
映画は、受験勉強に打ち込む9歳の少女の目を通して描かれています。
しかし、少女が現実に暮らす社会の話、大人社会で成長した王子の後日談は
正直私には、どうでもいい。
ストップモーション・アニメ(人形を使ったコマ撮りアニメのこと)で描かれた
星の王子さまの原作シーンはあまりにも美しかった。
王子さまが静かに倒れるシーンは、あまりにも悲しかった。
原作の王子は、毒ヘビに噛まれて死ぬことで自分の星へと帰って行くと
私は解釈していますので。
「本当にたいせつなものは目には見えない」
王子さまのそのメッセージは十二分に伝わって
そして、この映画製作に携わった人々の、原作へのリスペクトがそこかしこに感じられて
私には、それで十分なのです。
「リトルプリンス 星の王子さまと私」 http://wwws.warnerbros.co.jp/littleprince/