Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

「ドリームプラン」

2022年02月28日 | 映画

黒人初のグランドスラム・テニスプレイヤー、ビーナスとセリーナ・ウイリアムズ姉妹を育て上げた父リチャードの奮闘を描いた実話物語です。
カリフォルニア州コンプトンに暮らすリチャード・ウィリアムズ(ウイル・スミス)は、2人の娘を最高のテニスプレイヤーに育てると決意し、そのための78ページの計画書(ドリーム・プラン)を作成する。
特記すべきは、リチャードはテニスをしたことがないということです。
貧困家庭に生まれ、食べるのがやっとだった彼は、テニスどころではなかったのでしょう。
それでも専門書を徹底的に読み、人体力学からテニスの技術まで研究し、詳細なプランを作り上げる。
家計を支えるために警備の仕事などしながら、一日も休むことなく娘たちにテニスの特訓をする。

リチャードという男は、一言で言うなら「ものすごく熱くてあり得ない程にウザい」男です。
どんなに断られても、ピート・サンプラスやジョン・マッケンローを指導したポール・コーエンにコーチを依頼する。
そして「出世払い」で無償のコーチを勝ち取ってしまったのです。
そしてビーナスとセリーヌも又、親の期待に応えて必死に練習し、めきめきと頭角を現します。



典型的なスポ根サクセス・ストーリーなのでしょうが、正直言って私はこの父親があまり好きにはなれませんでした。
そもそもの動機が、優勝したテニスプレーヤーが4万ドルを受け取る姿をテレビで目撃したからだというのです。
それで娘を二人作り、幼い時からテニスを教え込んだとは。
娘たちの為でも勿論あるのでしょうが、それって自分が金持ちになりたいからでもあるのじゃないの?
リチャードが娘に「ビーナス・ウィリアムズ、お前の一番の親友は誰だい?」と尋ねるシーンがあります。
そしてビーナスは「パパだよ」と答える。
セリーヌも同じ。
娘たちにこんなに愛され、そして実際、見事にテニスの女王に仕立て上げたのだから、我々はもう彼を批判などできなくなってしまうのですが。


あんなに厚かましく理屈っぽく描かれたリチャードの、何処までが本当なのだろうと思いましたが、映画を観たビーナス本人が「父の魂が乗り移っていたかのよう」と感心したのだそうです。
とにもかくにもコンプトンの貧困地域のアフリカ系アメリカ人が、娘たちを自力でテニスの女王に育て上げたということが、どんなに凄いことかということなのでしょう。
原題の「King Richard」の方が、映画の内容をよく表しているように思います。
ウイル・スミスはアカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。

公式HP 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

一筋の涙

2022年02月27日 | 家庭
(2017年、モスクワの地下鉄)
テレビのニュースでウクライナの地下鉄のホームに殺到する人々の姿を見ると、胸が痛みます。
ロシアに行った時、地下鉄のホームが非常に地下深く作られていることに驚きました。
有事の時の核シェルターも兼ねているのだそうで、最も深い駅は地下84mなのだとか。
(ちなみに日本で最も深い駅は、大江戸線六本木駅の42mだそうです)
ウクライナは訪れたことがありませんが、旧ソ連の国ということで同様のものだろうと思ったら、やはり世界で一番深い地下鉄の駅は、キエフにあるアルセナリーナ駅というのですって。

いかに深くて安全とはいえ、あの硬い床で夜を明かすとは。
5~6歳の男の子の顔が、ニュースの画面でアップになりました。
フードを被ったその顔に、一筋の涙が。
どんなに不安でどんなに怖いことか。
子どもにこんな涙を流させるとは。
26日現在でウクライナでは198人の犠牲が確認されていると。

とりあえず日本は平和でありがたい。
陸続きではないとはいえ、ロシアも隣国であるのですが。
そして世界三大困った国とされる、その三ヶ国すべてが隣国なのですが。
日本だって、いつどうなるか分からないということか…


(下を向いている写真を)

久しぶりに息子たちと我家で食事しました。
チビ姫は1歳3ヶ月、もう元気に歩き回り、ワンワン、ドーゾなどの片言を。
どうか平和な日々が続きますように。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

怖い夢のよう

2022年02月26日 | 社会
(2017年、赤の広場のワシリー寺院)
まさかと思っていたのに起きてしまったウクライナ侵攻。
21世紀の現代に、自分の目の前でこんなことが起きるなんて。
2017年に旅行で訪れたロシアの、サービスは最上とはとても言えませんでした。
お釣りを投げるようにしてよこしたスーパーのオバサンもいたし、不貞腐れたようにコーヒーのソーサーをガチャン!と置くウエイトレスもいたし、モスクワの空港では半日以上待たされました。
でも、英語表記のない地下鉄のホームで案内してくれたオジサンや、路上で途方に暮れた我々を助けてくれたお兄ちゃんと、親切な人も色々いたことも事実。
あの人たちが戦争を望んでいるとは、とても思えません。
どうか一日も早く停戦して欲しいものです。

25日、駐日ロシア大使が会見を行ったというので、一体どんなことを話したのだろうと思ったら…
ガルージン駐日ロシア大使は、追加制裁を発表した日本政府に「ロシアも重大な対抗措置をとることになる。両国に影響は出るだろうが無益だ」と。
両国の友好な関係の発展のためにならないとして、北方領土問題にも影響が出かねないとの考えを示したと。

いやはや、ウクライナ侵攻を正当化するプーチンの演説にしろ、この人の言葉にしろ、
あまりにも上から目線で、何を言っているのか私にはさっぱり分かりません。
何度読んでも、文章が理解できないのです。
そうしたら、ロシアの五輪メダリストなどから「怖い夢のようだ。恥ずかしい。戦争反対。」という言葉が次々と発信されていると知って、少々ホッとしました。
かつてノーベル平和賞を受賞したドミートリ・ムラトフ氏は「ロシアが第三次世界大戦を始めたと、ロシア人は世界から憎まれてしまう」と。
ロシアの各地で反戦デモも起きているようですが、少なくとも1700人以上が拘束されたのですって。
本当に、怖い夢を見ているようです。

駐日ロシア大使「重大な対抗措置をとる」日本政府の追加制裁に“警告”

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こんなにガラガラ

2022年02月24日 | 社会

夫が沖縄に出張した際、JALのエアバス350はこんなにガラガラだったそうです。
乗客が少なくてあまりにもヒマだったせいか、CAが色々話しかけてくれたのですって。
その日の乗客はたった60人であるとか、今、富士山が実に綺麗に見えるから是非お撮りくださいとか。



ああそれで、普段はそんなことしたことない夫が、上の写真をLineで送ってくれたのね。
ついでに誕生日の夫に、こんなプレゼントが頂けました。
ガラガラの飛行機を飛ばさなきゃならない航空会社も、コロナ禍なのに沖縄まで出張する夫も、ご苦労様なことです。



コロナ以前、毎年海外旅行に行っていた頃は、ハイシーズンが多かったせいか、飛行機は常にギッシリ満席でした。
JALの2021年4~12月の最終損益は1283億円の赤字だったが、昨年10月以降の国内線の旅客需要が回復したせいで、前年同期の2127億円の赤字よりもマシになったのだとか。
そんな大きな数字を言われても私にはちっともピンと来ないのですが、こうした写真を見ると多少実感できるような気がします。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ミロ展―日本を夢みて」

2022年02月23日 | お出かけ

現代スペインの芸術家ジュアン・ミロの創作活動の裏には、日本文化への深い造詣があったのだそうです。
ミロは1888年の万国博覧会で始まったジャポニズム・ブームの真っ只中のバルセロナに生まれ、生家の近くに日本美術の輸入販売店もあって、早くから日本文化への憧れを持っていたのだと。
一方日本では1930年代からミロの作品が紹介され、世界に先駆けてモノグラフ(単行書)が出版されるなどの人気ぶり。
そんなミロと日本との深い繋りを紐解こうという展覧会です。

上のポスターを飾っているのは、《絵画(カタツムリ、女、花、星)》。
56年ぶりの来日を果たした絵だそうです。
カタツムリ、女、花、星を表すフランス語が、踊ったり流れたり尻尾が伸びたりして楽しそう。



《アンリク・クリストフル・リカルの肖像》背景に浮世絵のコラージュが。




《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》
今回の展覧会の中で、私が一番好きな絵です。
画面の中央に黒い線で描かれたものがオルガン、その上にあるのが星ということですが
私には、その星の左にあるビックリしたような顔の子がタロウに見える。
そして一番上に下向きにいるのが、散歩している私。
オモチャやオヤツや怖い犬などが画面いっぱいに散らかって、散歩のときのタロウの脳内思考のように見えるのです。



ミロは1966年の回顧展を機に訪日し、「長い間、日本を夢みていた」と。
2週間ほどの滞在で、五島美術館、龍安寺や桂離宮、信楽や瀬戸等の窯元など、精力的に各地を巡ったのだそうです。
ミロがそんなに日本を好きだったなんて知りませんでした。
私が子供の頃は「ホアン・ミロ」と言ったと思うのですが、その後カタルーニャ語の発音の「ジョアン・ミロ」となり、本展覧会では、現地の発音により近いという「ジュアン・ミロ」となっていました。



ランチはBunkamuraのドゥ・マゴで。
左下は「海老とアメリケーヌソースのクロックムッシュ」。
クロックムッシュは普通、パンにチーズとハムを挟んで焼いたものですが、こちらはとてもユニークな仕上がりでした。

「ミロ展―日本を夢みて」

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

時の番人

2022年02月21日 | トールペイント

駅の構内から時計が取り外されるというニュースを聞いて驚きました。
JR東日本は昨年11月から時計の撤去を進めており、今現在で22駅から撤去、今後500駅から撤去する計画だと。
なんで?と思ったら、駅の時計は自動で時刻を整正するために通信ケーブルを配線しており、その取り換えや故障修理にコストがかかるのですって。
500駅から撤去することで、年間3億円の削減効果があるのだそうです。

駅のあの時計に、そんなにお金がかかっているなんて知りませんでした。
ちょっと寂しい気もしますが、このご時世仕方ないのか。
と思った今朝、リビングの時計が止まってしまっているのに気が付きました。
トールペイントで描いた上の時計、もう20年ほども我家のリビングで時を刻み続けているのです。
遂に壊れたかと思いながら、電池を替えてみたら、元気に動き出しました。
よかった…



ついでにトールペイントの時計をいくつかご紹介します。
どれも10年以上前に描いたもので、とっくに止まってしまい、飾り物と化しているものもありますが。
こちらはアメリカから輸入した材料に描いた置時計ですが、一年もしない内に止まってしまったような。
このフォルムはカッコいいのですけれど。



春になると飾りたくなるイチゴの壁時計。
直径28㎝ほど。



こちらも優しい春のイメージの時計。
これはトイレの飾り棚です。



これもリビングに掛けている時計。
アイアン部分を入れての長さ43㎝。


他にも注文を受けたり、引っ越し祝いのプレゼントとしてなど、沢山の時計を描いてきました。
20個以上は描いてきたように思います。

コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ものがたりの家」

2022年02月20日 | 
てっきり名作文学の中に出てくる家の絵を集めた本かと思いましたが、さにあらず。
著者の自由な想像で創られたオリジナルの家の数々です。
どれをとってもそこに独特な世界があり、つい引き込まれてしまいます。



例えば「寡黙な整備士の別荘」。
”長期休暇の際に湖畔の別荘を訪れる自動車整備士は、そこで蒸気式のボートを整備して一人で乗りこなすことを無上の楽しみにしている。妻子はなく、家族は大型犬一頭のみだが、本人はそれで満足している。”
この別荘、ボートのドックがあり、直接家からボートに乗り降りできるのですね。
でもねジョゼフ(私が勝手に名付けた)、犬のビリー(これも)はいつかは死んでしまうのよ…
まあそれは、人間でも同じことだけどね。


「厭世的な天文学者の住処」。
”星への興味が深いあまり、人里離れた奇岩の上で隠者のように暮らし、空を眺める日々を送っている。人々からは占星術師と理解されているが、その研究内容はむしろ天文学と呼ぶにふさわしい。”
小さな庭でヤギを飼い、ミルクやチーズを食用にする他、最低限の野菜を作ってほぼ自給自足しているのだそうです。
ギリシヤのメテオラで、本当にこんな風な奇岩の上にできた修道院を訪れました。
中世に何人もの人の命を落としながら建てられたという奇岩の上の建物は、今も修道院として機能しながら観光名所となっていました。
小さな修道院の奥には、歴代の修道士たちの髑髏が山積みに。
宗教の為に、ここまで自分を罰しながら生きるのかと驚きました。
メテオラ紀行はこちらです。



「森の中の診療所」。
”小さな村の、小さな森の中にある診療所。訪れる患者は少なく、若い医者がたった一人で受け持っているが、一日患者が来ないこともある。そんなある日、気まぐれで怪我をしたタヌキを助けてあげたところ、意外な患者が…。”
そして怪我をしたクマやウサギや小鳥が、果実や木の実を持って訪れるようになったのね。
当惑したような龍之介先生(勝手に命名)の表情が微笑ましい。


他にも「水没した都市の少女の家」「偏執的な植物学者の研究室」など、想像の世界の家が全部で33軒。
コロナ禍、しかもどんより曇り空の天気の今日、五輪の中継を眺めながら読むのにピッタリの本です。

「ものがたりの家」 

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「そっちが泣くのかー!」

2022年02月19日 | 社会

まったく熱心には観てなかった北京五輪ですが、明日で閉幕と思うと寂しいものがあります。
私は半年前にボランティアをした東京五輪の記憶がまだ生々しくて、ついそれと比較したりていました。
白と青の、東京五輪とちょっと似たようなユニフォームを着た北京のボランティアの人たちを見ると、この人たちも同じように研修を受けたのかなあとか、PCR検査やらされまくっているのだろうなあとか。
それにしてもフィギュア女子のドーピング問題は、不可解な話でした。

ロシアは以前、国ぐるみのドーピングが明るみになって、その制裁として国としての参加ができなくなったのでしょう?
それでまたこれって…懲りないというか何というか。
バレるとは思わないのでしょうか?
12月に陽性が分かったのに何故今頃騒ぐのかも、さーっぱり分かりません。



選手は一生懸命頑張っているのでしょうに、本当に可哀そう。
ワリエワが決勝で2回も転んで泣きそうな顔で引き揚げてきた時に、あの金髪の女性コーチがかけた言葉。
「なぜ諦めたの?なぜ戦いをやめたの?説明しなさい」
その字幕を見て驚いたのですが、やはりあれはないんじゃないかと世界的に批判が集まっているらしい。



それと反対に、ホッコリしたシーン。
女子パシュート決勝の最終コーナーで最後尾の高木菜那選手が転倒し、金メダルを逃した直後のセレモニー。
この時、目を真っ赤にした3人にレンズを向けたカメラマンが、泣き出してしまったのですって。
それを見た3人が、「いや、そっちが泣くのかー!力が抜けるわ」と泣き笑いしちゃったのだそうです。
「泣きじゃくるメダリストを笑顔に変えたカメラマンが話題」


人気沸騰で中々手に入らないというビン・ドゥンドゥン。
この子たちの人気ぶりを聞く度に、話題にもならなかった東京五輪のミライトワとソメイティが私は不憫になるのですが、まあパンダ自体が可愛いのだから仕方ないよねえ。
小林陵侑選手がこの子を胸に抱えた上の写真の姿が、「ビン・ドゥンドゥンの扱い、ぶっちぎりで1位」と話題になっているのだそうです。

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

過去最多数と「ティム・ホー・ワン」

2022年02月18日 | グルメ

昨日の感染者は東京都1万7864人、全国で9万5208人。
第六波はようやくピークアウトした言う専門家もいるようです。
ピークアウトというよりは高止まりしているというような印象ですが、それでも増え続けるよりは少しでも減少してくれて嬉しい。
でも昨日の死者は271人で、これは過去最多の数字なのですって。
オミクロン株は軽症が多いとは言っても、高齢者や基礎疾患がある人が罹れば命取りになる、これは前から言われていたことだけど、本当にその通りに。
ただその死因が、コロナのせいというよりは、それによって元々の病気が悪化したからというのなら風邪やインフルエンザと変わらないのじゃないかという気もします。
それなのに一向に2類から5類に引き下げないのは何故?
どなたか分かるように教えて下さい。



先日、映画を観たついでに寄った「ティム・ホー・ワン(添好運)」新宿店。
香港でミシュラン一つ星、でも低価格という点心専門店が日比谷シャンテにできて以来、
ずっと気になっていたのですが、コロナ禍においてさえいつも並んでいました。
シャンテで映画を見る度に行列にガッカリしていたのですが、新宿店は今回行列なし!
ベイクドチャーシューパオ(外側は甘いパン皮、中は熱々のチャーシュー餡)、海老と黄ニラのチョンファン、ピータンと塩卵入りの塩豚のお粥、ポークと海老の焼売、マンゴー入りココナッツタピオカミルク。
香港の町なかの、海老の尻尾なんかを無造作に床に吐き捨てるような(向こうの人たちは普通にそうしていた)食堂で食べた、ちょっと泥臭い、本場の味がするような気がしました。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

憎しみの果ての「クレッシェンド 音楽の架け橋」

2022年02月17日 | 映画

世界的指揮者のエドゥアルト・スポルクは、深刻な対立が続くパレスチナとイスラエルの若者たちでオーケストラを編成し、平和を祈念するコンサートを開くというプロジェクトを引き受ける。
オーディションを経て二十数人の若者たちが選ばれるが、彼らはパレスチナ陣営とイスラエル陣営に分かれて憎悪をぶつけ合い、衝突を繰り返す。
スポルクはそんな彼らを南チロルでの21日間の合宿に連れ出し、若者たちはセッションを重ね、少しずつ歩み寄っていくが…



音楽家になる夢を持ち、オーディションで選ばれ、家族の反対や軍の検問を乗り越えて集まってきた若者たちだが、彼らは激しくぶつかり合ってしまう。
イスラエル側のリーダー的存在の青年ロンは、スポルクに対しこう言い放つ。
「政治と切り離そうなんて無理ですよ。僕らにとっては日常の問題なんです。そんなのSFだ!」

ある日スポルクは、部屋の中央に1本のロープを置き、その両側に両陣営を向かい合って立たせ、本音を言い合えと言う。
最初はポツポツと、しかし段々に激しく、本当に激しく罵り合う。
「テロリスト!」「この人殺し!」
全員が絶叫し合い、ここまで憎み合って一体どうなってしまうのかとハラハラして見ていると、そのうち両陣営ともに泣きながら倒れ伏してしまうのです。
そしてスポルクも、自分自身のことを語る。
ドイツ人の彼の両親はナチス党員であり、彼は差別を受けてきたというのです。
この憎悪の構図は、こんなにも重層的なものだったのか…



散々にぶつかりながら、しかし練習を重ね、生活を共にするうちに、若者たちは少しずつ心を開いて行く。
ヨルダン川西岸から来たパレスチナ人青年のオマルとイスラエル人女性のシーラは、恋に落ちる。
幸福感に酔いしれたシーラは、あまりにも軽率なことをしてしまう。



「音楽の力で問題を乗り越える感動映画」として、最後に仕上がった見事なコンサートを期待していた私は、想定外の悲しい展開に言葉を失くしました。
しかし銃声が飛び交い、テロや紛争が日常的に起きている彼らの世界では、これは特に驚くことではなく、普通の出来事であるのかもしれません。
パレスチナ人とイスラエル人との合同オーケストラなんてあり得ない、と思ってしまいますが、実際1999年に和平オーケストラ「ウェスト・イースタン・ディヴァン管弦楽団」というものが設立されて、この映画はそこからインスパイアされて作られたというから驚きます。
ミニシアター系の映画ですが、多くの人に見て頂きたい感動作です。
「クレッシェンド(crescendo)」とは、「だんだん強く」を意味する音楽用語だが、もともとの原義は「成長」なのだそうです。
監督・脚本のドロール・ザハヴィは、テルアビブ南部の貧しい地域で育ち、奨学金でドイツ留学して演出を学んだといいます。

「クレッシェンド音楽の架け橋」 https://movies.shochiku.co.jp/crescendo/

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする