1947年、インド返還のため最後のイギリス総督に就任したマウントバッテン卿。
500人もの使用人が使える豪壮な総督官邸を舞台に、返還後のインドをどうするべきか、連日連夜の討論が行われる。
国民会議派のネルー(ヒンズー教)、ムスリム連盟のジンナー(イスラム教)、
平和一国主義のガンジーと交渉するが、結局、統一インドをあきらめる。
英領インドを「インド」(ヒンズー教・シーク教)と「パキスタン」(イスラム教)へ
分離独立させると、いわゆるマウントバッテン裁定を発表する。
そこに官邸に仕える秘書官ジート(ヒンズー教)と令嬢の世話係のアーリア(イスラム教)の
切ない恋愛が絡まって…
一個人の家に500人の人間が仕えるということがどういうことなのか、
字面からは理解できないのですが、画面を見ると納得します。
大広間と迎賓室がそれぞれ34部屋、食堂が10部屋。
とりもなおさず、かつての大英帝国がいかにインドを搾取していたかということか。
しかも、マウントバッテン卿があれだけ苦悩して出した分離独立という結論は
あらかじめチャーチルを代表とする英国政府が決定していた方針だったのですね。
独立させた後も、何処までも自国の利益を守ろうとする大国の老獪な決断。
そして、一つの国を宗教別に二つの国に分離独立させるということの裏に
どれだけの衝突、暴動、報復、虐殺があったかということに、愕然とします。
政治家が引いた国境線の為に1400万人が移動し、死者の数は100万人に達したと。
歴史の教科書の「分離独立」の一言では分からない、こうした庶民の悲劇の一端が
映画の画面から窺い知れます。
こうした骨太の作品が、東京でたった一館で上映というのは残念。
エンドロールに一枚の白黒家族写真が。
その大移動で夫を亡くしながらも生き延びたその写真の女性の孫が
この映画の監督、インド系イギリス人のグリンダ・チャーダ。
前作「ベッカムに恋して」では、様々な民族の慣習に縛られながらもサッカーに打ち込む
インド系イギリス人の女の子を、生き生きと描いていました。
Viceroy's House http://eikokusotoku.jp/
#welovegoo