金曜日に発売された、春樹4年ぶりの長編。
週末の楽しみにしようと思っていたのに、土曜の夜には読み終わってしまいました。
ネタバレするわけにはいかないので、感想ではなく、簡単な印象のみ記します。
「その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入り口近くの、山の上に住んでいた。
夏には谷の奥の方でひっきりなしに雨が降ったが、谷の外側はだいたい晴れていた・・・
それは孤独で静謐な日々であるはずだった。
騎士団長が顕れるまでは。」(『騎士団長殺し』第一巻の背表紙より)
顔を持たない男から肖像画を描くことを頼まれるという
不可思議な話から、プロローグが始まります。
謎に巻き込まれる主人公、ベッドシーン、お洒落な(或いは不可解な)登場人物たち、
イデア、メタファー、孤独、異次元の世界、そして謎。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」や「ねじまき鳥クロニクル」と
少々似通ったところがあり、鼠や羊男が現れそうな気がします。
が、無論そんなものは現れず、代わりにオムレツやローストビーフ、チーズトースト、ザッハトルテなど
美味しそうなものがあちこちに。
モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』やシュトラウスの『ばらの騎士』は
重要な舞台装置として登場します。
クラッシック音楽に飽き足らず、ローリング・ストーンズやセロニアス・モンクやヒューイ・ルイスなども。
相変わらず小物使いが上手いなあ。
小田原のゴミ収集車の音楽が「アニーローリー」だとは知りませんでした。
私は春樹の作品は、理解しようとはハナから思っておらず、
ただ楽しみたい、その心地よい空間にちょっとお邪魔させて下さいという
スタンスで臨んでいるような気がします。
好きな作家の分厚い新作を抱えた週末の夜の幸福感は、何物にも代えがたい。
その分、読み終えた後の寂しさも中々のものですが…
「騎士団長殺し」 http://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/