2016年に韓国で出版されるや100万部を突破し、社会現象を巻き起こしたという話題作。
キム・ジヨンは33歳、3年前に結婚し、去年女の子を出産して会社を辞めた。
専業主婦になった彼女は育児に専念していたが、ある日突然、別の人格が憑依したようになる。
カウンセリングに通い、その原因を探るため、彼女の誕生から学生時代、受験、 就職、結婚、育児までを振り返る。
彼女が出会ってきた、様々な小さな差別や社会の不合理が浮き彫りになって来る。
韓国の家父長制度や男尊女卑については多少聞き知っていましたが、その詳細を知って驚きました。
1999年には「男女差別禁止及び救済に関する法律」ができたということですが
”決定的な瞬間になると「女」というレッテルがさっと飛び出してきて、視線を遮り、伸ばした手をひっつかんで進行方向を変えさせてしまう”のだと。
男の子を優先し、弟ばかり大事にしていたジヨンの実家。
赤ん坊はまだかと圧力をかけ、娘を産んだら次は息子をと言ってくる彼女の婚家。
就活に散々苦労し、ようやく入った小さな広告代理店では、セクハラまがいの企業への接待が待っていた。
専業主婦になってからは生活が厳しく、育児の閉塞感とお金を稼がなければという焦りに苦しめられる。
韓国も日本も似たようなものだなあとつくづく思いました。
私の実家も長男大事で、兄はいつも優先されていました。
息子を出産した時には、婚家からお手柄だったねと言われました。
私が大学を出て就職した先は結婚退職制(!)で、2年間だけの勤務でした。
以来私はずっと専業主婦で、今時の女性の勤務実態についてはまるで知らないのですが、都会のマンションの一室でのワンオペ育児の閉塞感には、とても共感するものがありました。
私の実家や婚家が時流に反して古臭い考え方であること、ジヨンは私よりも20年も後に生まれていることを考えても、韓国で今もこんなとは驚きました。
この本がベストセラーになり、2019年に映画化されたことを考えても、それが裏打ちされるようです。
映画は大分前に観て感想も書いていないので、詳細は忘れてしまいましたが、大方原作通りだったように思います。
本の中のジヨンが閉塞感を抱えたまま終わるのに対して、映画の方は彼女がその経験を書いて小説家になるという明るい結末で終わっていたようではありますが。
「82年生まれ、キム・ジヨン」本
映画