婦人画報の10月号の特集は
「究極のレシピあります 100人の献立」。
先人の知恵が生み出した「一汁三菜」という和食の基本の組み合わせが
いかにバランスよく身体によいものかということが、丁寧に解説されています。
そして、著名な料理人の自慢の料理の数々、
シェフの休日ごはん、美容研究家の勝負食などから
織田信長や千利休が手掛けた茶事の料理までを、写真入りで紹介。
その中で私が一番惹かれたのは
「作家の著作から 読む献立集」というもの。
色々な作家の料理本、あるいはエッセイの中から、
料理について書かれた文を紹介しているのです。
例えば山田風太郎の「あと千回の晩御飯」から
”わが家で愛用する料理に「チーズの肉トロ」と称するものがある。
例のとろけるチーズを薄い牛肉で握りこぶしの半分くらいに包み、
サラダ油で焼いたもので、これをナイフで切って食う。
正しくは肉のチーズトロというべきだろうが、語呂の関係で
「チーズの肉トロ」と呼んでいる。”
阿川弘之の「食味風々録」から
”昆布だしで白米を炊き上げ、別に、醤油と味醂でやや濃い味に煮込んでおいた土筆を
その上へ振りかけてむらす。十分むれたところを、杓子でかき廻せば、簡単に
つくし飯が出来上がる。調理方法は簡単だが、仄かな苦味があって、実に旨い。”
伊丹十三の「女たちよ!」から
”ところで、このキューカンバー・サンドウィッチであるが、これは実にけちくさく、
粗末な食べ物でありながら、妙においしいところがある。
胡瓜のサンドウィッチというと、みなさん、胡瓜を薄く切って、
マヨネーズをつけてパンにはさむとお考えだろう。
違うんだなあ、これが。マヨネーズなんか使うのはイギリス的じゃないんだよ。
マヨネーズじゃなくて、バターと塩、こうこなくちゃいけない。”
他にも、石井好子の「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」から
ウグイス色をしたセリのポタージュの作り方、
玉村豊男の「料理の四面体」から焼きナスのシリア風など、
昔読んだ本からの美味しそうな引用が山ほど。
惜しむらくは、向田邦子、この人の料理本が私は大好きなのに、
ここではなんと「卵かけご飯」が紹介されていること…
それはともかく、幼い頃読んだ「ぐりとぐら」のカステラから始まって
本に出てくる料理の、なんと美味しそうなことか。
日一日と秋らしくなってきた今日この頃、
ひとつずつじっくりと読んで、作ってみたくなりました。
婦人画報 http://www.hearst.co.jp/product/fujingaho