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先日見損なったこの作品、年末で忙しいし、有楽町まで又行くのも面倒とほぼあきらめていたのですが
ジャズが好きな夫が、その内容なら観に行こうと言い出したのです。
スウェーデンの世界的ジャズシンガー、モニカ・ゼタールンドのサクセス・ストーリーです。
ストックホルム郊外の田舎町で、電話交換手をしながら5歳の娘を育てているシングルマザーのモニカ。
ジャズシンガーになる夢を捨て切れず、両親に娘を頼んではライブ活動を続けている。
父親はそんな娘が許せず、母親不適格として、ことあるごとに彼女をなじる。
モニカは遂に父親と決別し、娘を連れて男の元に転がり込んで、尚もジャズに打ち込んでいく。
実際に歌手として活躍するエッダ・マグナソンが、伝説の歌姫モニカを演じています。
美しいし、歌唱力も素晴らしい。
しかしモニカという女は、その才能は素晴らしいが、相当嫌な女でもあります。
厳しい父親に責められるのは可哀想ですが、小さな娘をあれだけ世話して貰いながら
両親に感謝することもなく、あの態度はないだろうとも思うし、
一番身近にいて自分のことをずっと思ってくれる男は、器じゃないと切り捨て、
有名人である新進映画監督をさっさと選ぶ。
肉食系で身勝手、彼女にとって男は利用するものでしかない。
才能を認められてNYに行くものの、そこでは受け入れられず失意のうちに帰国したり、
欧州の歌唱力コンテストに出たものの、最下位となってバッシングを受ける。
男とも上手く行かず、アルコールに溺れ、遂には娘をも取り上げられる。
しかしモニカはくじけなかった…
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最後にNYでビル・エヴァンスと共演し、それをラジオで聴いた父親が
モニカに電話してくるところでは涙ぐんでしまいました。
英語のタイトル"Waltz for Monica"は、ビル・エヴァンスの名曲"Waltz for Debby"から来ています。
これはジャズに疎い私ですら知っている名曲中の名曲で
夫はこれが聴きたくて、この映画に興味を持ったようです。
NYのジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードで1961年に録音された"Waltz for Debby"。
1985年にNYに行ったとき、グリニッジ・ビレッジのこのジャズクラブに私も行きました。
エヴァンスの姪、デビーの誕生日に捧げられたこの曲がここで演奏されたのかと
感慨深いものがありました。
エヴァンスはその頃すでに麻薬に体を蝕まれ、心身ともにボロボロの状態でありながら
あの甘く優しい曲を演奏したのかと。
そのライブがこちらです。
こちらがモニカ・ゼタールンド本人の写真。
映画の中の彼女とあまりにも似ているので驚きました。
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「ストックホルムでワルツを」 http://stockholm-waltz.com/