朝日の夕刊の「人生の贈りもの」という連載記事のゲストが
今週は、難波のサガンこと田辺聖子女史です。
サガンというよりは、やはりおせいさんとお呼びした方がピッタリのような…
私はこの人の本は、昔買った本をごくたまに読むだけで満足していて、最近のは読んでいなかったのでした。
昨日の夕方、タロウの散歩のついでに近くの書店に寄ったら、4年前に書かれた「夫婦の愛と別れを綴った日記」というのがあったので、買ってしまいました。
”93歳の母、車椅子の夫と3人で暮らす多忙な作家の生活日記。仕事と介護をうまくこなし、季節や旅やお酒を楽しもうとあれこれ工夫する中で、最愛の夫ががんになった。看病そして別れ。人生の悲喜が溢れ出す感動の書。"(amazonより)
”テレビの音は絞ってあって、病院内は静かだった。
広い窓の外は半分、夕焼け。そんなつもりはなかったのに、
傍の小椅子に座り、穏やかな表情の彼を見るうち、
子どものように顔が歪んで、涙が出てしまった。
彼は私に目を当て、ゆっくりと一語ずつくぎりながらつぶやく。
「かわいそに。
ワシはあんたの。
味方やで。」”
この会話を交わした日から2ヶ月余で、カモカのおっちゃんこと、おせいさんの最愛の人は逝ってしまったのでした。
遺影に呵呵大笑の写真を掲げ、
”(何を話すかなあ、おっちゃん)
と私は西宮の葬儀場に置いてきた棺の中の彼にいう。
(コラー。ちゃんと笑い取れよーっ。ワシの葬式じゃっ。
笑うてナンボちゅう奴よ。笑わしたらんかい。)と彼。”
そして、おせいさんの喪主挨拶は、見事に笑えるものだったのでした…
4人の子持ちの中年男と結婚したおせいさん。
”この彼の「教育二大方針」が、私には面白かった。
一、メソメソするな
二、喧嘩するな
これだけ。勉強せい、というのはないわけである。
私がその不備を衝くと、彼は、そんなこと強制しても、する奴はするし、せえへん奴は、せえへんのじゃ、と自若としていった。
全く、ヘンなおっさんであった。”
で、進路自由で強制されなかったこの家の子ども達は、大学出、高校出、高校中退と、多彩な学歴であるらしい。
多感な齢の子ども達を育て上げ、年中原稿の締め切りや講演に追われながら、身体の不自由な老母を抱え、そして最愛の人を看取る…
いかにお手伝いさんや秘書嬢に手伝ってもらっているとはいえ、どんなに大変な日々であるかということは想像に難くありません。
それを
「いささかは 苦労しましたと いいたいが
苦労が聞いたら 怒りよるやろ」
とさらっと言ってのけるおせいさん。
頭が下がります…
『残花亭日暦』
今週は、難波のサガンこと田辺聖子女史です。
サガンというよりは、やはりおせいさんとお呼びした方がピッタリのような…
私はこの人の本は、昔買った本をごくたまに読むだけで満足していて、最近のは読んでいなかったのでした。
昨日の夕方、タロウの散歩のついでに近くの書店に寄ったら、4年前に書かれた「夫婦の愛と別れを綴った日記」というのがあったので、買ってしまいました。
”93歳の母、車椅子の夫と3人で暮らす多忙な作家の生活日記。仕事と介護をうまくこなし、季節や旅やお酒を楽しもうとあれこれ工夫する中で、最愛の夫ががんになった。看病そして別れ。人生の悲喜が溢れ出す感動の書。"(amazonより)
”テレビの音は絞ってあって、病院内は静かだった。
広い窓の外は半分、夕焼け。そんなつもりはなかったのに、
傍の小椅子に座り、穏やかな表情の彼を見るうち、
子どものように顔が歪んで、涙が出てしまった。
彼は私に目を当て、ゆっくりと一語ずつくぎりながらつぶやく。
「かわいそに。
ワシはあんたの。
味方やで。」”
この会話を交わした日から2ヶ月余で、カモカのおっちゃんこと、おせいさんの最愛の人は逝ってしまったのでした。
遺影に呵呵大笑の写真を掲げ、
”(何を話すかなあ、おっちゃん)
と私は西宮の葬儀場に置いてきた棺の中の彼にいう。
(コラー。ちゃんと笑い取れよーっ。ワシの葬式じゃっ。
笑うてナンボちゅう奴よ。笑わしたらんかい。)と彼。”
そして、おせいさんの喪主挨拶は、見事に笑えるものだったのでした…
4人の子持ちの中年男と結婚したおせいさん。
”この彼の「教育二大方針」が、私には面白かった。
一、メソメソするな
二、喧嘩するな
これだけ。勉強せい、というのはないわけである。
私がその不備を衝くと、彼は、そんなこと強制しても、する奴はするし、せえへん奴は、せえへんのじゃ、と自若としていった。
全く、ヘンなおっさんであった。”
で、進路自由で強制されなかったこの家の子ども達は、大学出、高校出、高校中退と、多彩な学歴であるらしい。
多感な齢の子ども達を育て上げ、年中原稿の締め切りや講演に追われながら、身体の不自由な老母を抱え、そして最愛の人を看取る…
いかにお手伝いさんや秘書嬢に手伝ってもらっているとはいえ、どんなに大変な日々であるかということは想像に難くありません。
それを
「いささかは 苦労しましたと いいたいが
苦労が聞いたら 怒りよるやろ」
とさらっと言ってのけるおせいさん。
頭が下がります…
『残花亭日暦』