Zooey's Diary

何処に行っても何をしても人生は楽しんだもの勝ち。Zooeyの部屋にようこそ!

ヒースの丘のジャック・ラッセル

2013年06月29日 | 社会


FBで見たこの写真、例によって説明はありませんでしたが
画像検索して「Jack Russell Terrier playing in Heather」という言葉を見つけました。

Heather(へザー)とはHeath(ヒース)のことでもあり、
イギリス文学には、それが生い茂る荒野がよく出てくるのです。
例えば、ブロンテ姉妹の「嵐ヶ丘」や「ジェーン・エア」。
あるいは、子どもの頃夢中で読んだバーネットの「秘密の花園」。
これはしつこく読んだので、今でも覚えているのですが
イギリスの古いお屋敷に来たものの、
外に出たがらない青白い顔のお嬢さんメアリーに
赤い頬の女中のマーサが、荒野にはヒースの花が群れ咲いて
春になるとそりゃあ綺麗ですよ、というシーンがあるのです。
小さかった私は、はるかイギリスの、見たこともないヒースという花や
百も部屋があるというメアリーのお屋敷に思いを馳せたものです。
ヒースがエリカのことであると知ったのは、
大人になってからだったのでした。

ヨークシャー辺りの高原が一面この花で紫色に染まるという光景を
いつか見てみたいものです。

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ちょっと残念「ハピネス」

2013年06月28日 | 


この作品は、現代のママ友の実態を描いたとして新聞雑誌など
色々なメディアで取り上げられ、読むのを楽しみにしていました。

有紗は東京ベイエリアのタワーマンションの29階に住む、30代前半の専業主婦。
夫はアメリカに単身赴任、三才の一人娘と二人で住み、近くのママ友と日々付き合っている。
同じ年頃の娘を持つママ友たちとは、一見仲良くしているように見えるが
5人の間には微妙な、しかし歴然とした格差があった。
分譲か賃貸か、家賃の高低、学歴、実家の家柄、夫の職種などによって。
有紗は、自分の秘密をひた隠しにして、精一杯背伸びして付き合っていたが…

やれやれ、と思ってしまう。
この主人公の有紗が、どうにも好きになれない。
自分に自信がなくて嘘で身を固め、見栄っ張りで人を妬みながら生きている。
自分はグループの中で「公園要員」に過ぎないという悲しい自覚を持ちながら
そのグループから離れることもできない。
子どもを有名幼稚園に入れようとするママ友たちに、
とてもそんな余裕がないのに、張り合おうとする。
5人のママ友の中で、意外な不倫関係が発覚する。
有紗自身に突きつけられた離婚問題、隠してきた過去が絡んで、
彼女は千路に迷う…

ママ友たちの狭い世界の中の閉塞感、そのくだらなさはよく伝わりますが
それ以上でもそれ以下でもない。
所詮、お洒落な女性雑誌「VERY」に連載されていた小説だと納得できるだけ。
情けない弱者が主人公であることは一向に構わないのですが
それならそれなりに矜持を見せるというか、人生の決着を引き受けて欲しいのに
どうも中途半端で…
ママ友たちの心理的駆け引きを、もっと息苦しくなるほど克明に
描いて欲しかったとも思います。

桐野夏生の「OUT」で衝撃を受けてから
「グロテスク」で舌を巻き、「柔らかな頬」「残虐記」など夢中で読んできましたが
「アイム・ソーリー・ママ」「魂萌え!」辺りからどうも失速しているようで…
ちょっと残念。
また衝撃作で驚かせて欲しいものです。

「ハピネス」 http://tinyurl.com/nhp47gk
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思い出したリンゴの味「奇跡のリンゴ」

2013年06月26日 | 映画


リンゴの無農薬栽培に成功した、津軽の木村秋則夫妻の物語。
リンゴ農家に婿養子として入った秋則は、リンゴ栽培に使う農薬の為に
身体の不調に苦しむ妻、美栄子のために、無農薬栽培を決意します。
でもそれは、途方もなく大変なことだった。
何年も何年もリンゴの木は病気に襲われ、虫に食べ尽くされ、葉は枯れ、
果実が実るどころか花も咲かず…
10年もの間、無収入!
貯金はとうに底をつき、電気も電話も止められ、車もバイクも手放し、
リンゴ園の半分を抵当に取られ、村八分にされ。
窮地に追い込まれて、いよいよ自殺も考えた11年目にようやく…



結果が分かっていても、気持ちよく泣ける映画です。
捻りも何もない、ド直球の演出。
絶望の底にいても支え合う、家族の愛。
素直に心に沁み入る久石譲の音楽。
そして私が思い出していたのは…

私は以前、このリンゴを食べたことがあるのです。
白金台のフレンチ・レストラン、シェ・イグチで。
2006年だから、今から7年も前。
まだ今ほどには、木村氏が有名ではなかった頃。
その時の日記を引用します。



”ちょっと変わった一品が出ました。
小さなカップに入った白いスープです。(写真)
「青森の木村さんのリンゴで作りましたリンゴスープです。」
いきなりそう言われましても…
青森の木村さんとはそも何者か?
ここに来た今までのゲストはそう言われて、
はあ、これが青森の木村さんのリンゴで作ったリンゴスープですか、と
ありがたく押し戴いてスープを飲んで来たのか?
大体これってデザートなのか何なのか?
そんなことを思いながら一口頂くと…
甘酸っぱい!美味しい!
リンゴがここまでまろやかで優しい味になるなんて!”
http://diary.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/ako_0330/?Y=2006&M=11&D=9

無知の極みで失礼なことを申しあげまして…
その後、木村さんはNHKの番組で取り上げられたり、本に書かれたりして
日本での有名人になったのは周知の通り。
そうして今回の映画化ということになったのでした。
今更ですが、木村さん、本当に御成功おめでとうございます。

「奇跡のリンゴ」 http://www.kisekinoringo.com/
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俺様主義と「ドン・キホーテ」

2013年06月24日 | 社会


昨日、新国立劇場で、バレエ「ドン・キホーテ」を観て来ました。
先月こちらで観た「ペンギンカフェ」も一味違った現代バレエで面白かったのですが
今回のはクラッシック・バレエの王道。
お城や森を舞台に、お姫様や騎士が華麗に舞い踊り、麗しいことこの上ない。

今回のバレエとは関係ないのですが
観賞中、熊川哲也氏のことを考えていました。
新国立劇場のバレエ団のマネジメントに関して
彼がその著書の中で、批判的なことを述べていたからです。
熊川氏のバレエは昨夏、「真夏の夜の夢」を観たきりなのですが
もう素晴らしい、の一言でした。
一体どのような家庭に生まれてどのように育ったらああいう人ができるのかと興味深々、
ごく最近、彼の自伝的エッセイ「made in London」を読んでみたのです。



1972年旭川市生まれ。
「ごく普通のサラリーマンの家庭」に生まれ、
母親も2歳年上の兄も、バレエの経験はなかったと言っています。
10歳でバレエを始め、みるみる頭角を現し、15歳で英国ロイヤルバレエ学校に留学。
17歳の時、ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人初の金賞を受賞。
同年、ロイヤルバレエ団に東洋人として初めて入団し、最年少でソリストに昇進。
1993年プリンシパルに昇格。

その後、ロイヤルバレエ団を退団して自らKバレエカンパニーを創立、
その活躍ぶりは周知の通りです。
この本は、バレエ団を退団してすぐの頃、書かれたようなのですが
いや、驚きました。
全編自己陶酔の「俺様主義」なのです。

彼の言動から、なんとなくそんな雰囲気は感じ取っていたのですが
実は血と汗と涙の努力が隠されていたとか
例えば英国に渡ってすぐは、世界の壁の厚さに挫折感を味わったとか
そんな独白を期待していたのですが…
とんでもなかった。

15歳で渡英した際も、”僕の技術レベルが高いということで
いきなり17~19歳のアッパークラスに入れられた”そうなのですが
”みんなの踊りを見た時、思っていたほどレベルが高くなかったのがわかり、
何だ、この程度か。自分の方が上手いじゃないかと拍子抜けしてしまった”と。
そして彼はこうまで言っているのです。
”僕はプリンシパルに昇格するまでーその後もだがーさしたる努力をしたことがない。
これができるようになりたいと思ったことで、できなかったことは一つもない。”

恐れ入りました。
そこまで言い切れる人間が、世の中に存在していたとは。
逆に言えば、そのくらいじゃないと
バレエ団を創設してそれを率いるなんてこと、できないのかもしれませんが…
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「ベージュ アラン・デュカス東京」

2013年06月23日 | グルメ
シャネルとアラン・デュカスのコラボによってできた「ベージュ アラン・デュカス東京」。
そのアラン・デュカスが絶大な信頼をおいているという小島景シェフは
毎朝、新鮮な野菜を鎌倉から背負っていらっしゃるのだとか。
銀座のシャネルビルの最上階、ミシュラン二つ星。

店内はシャネルのイメージを反映したエレガントな感じ。
シャネルのエスプリを効かせた、ツィードの椅子や仕切りや食器が揃えられています。

 ウェイティング・ルーム

 ロゼのシャンパン
 白魚のオムレットと仔牛胸肉のニース風
 車海老のサラダ、コンディセン・コライユ
 九州産和牛 ジャガイモとクレソン、胡椒風味

デザートはこちらのスぺシャリテ、
「カレ・シャネル ショコラプラリネ グラスノワゼット」

金箔を散らした濃厚なチョコレートの上に、アメがけのナッツ。
これほどナッツの味が濃いチョコレートを食べたのは、初めて。
それと、フレッシュ・ハーブティが特筆ものです。
私は普段、食後にはコーヒーを頼むことが多いのですが
給仕さんが、生のハーブの鉢満載のトレイを運んで行くところを目撃したのです。
あまりにもいい匂いがしたので、思わずハーブティを注文。
その場でハーブを摘み取って、希望通りブレンドしてくれます。
私が頼んだのは、カモミール、ローズマリー、ミントのブレンド。



そして小菓子のマカロンとチョコレート。
有名なお料理をさしおいて、お菓子やお茶ばかり取り上げるのも気がひけますが…
銀座の上空で楽しむ、贅沢でエレガントなひとときでした。

「ベージュ アラン・デュカス東京」 http://www.beige-tokyo.com/ja/
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う~ん…「グレート・ギャツビー」

2013年06月19日 | 映画

原作と映画は別物であるということは百も承知ですが
これだけ有名な原作の映像化であれば、比較されるのも仕方ないことでしょう。
ただ私はこの小説は若い頃に読んだきり、今は手元にないので詳細は覚えていません。
村上春樹が心酔したほどには、私は感動しなかったのですが
それでも胸の奥にうっすらと印象が残っています。
その目線からの感想です。

1920年代、禁酒法による闇市場がはびこり、空前の好景気に沸くアメリカ。
お城のような大邸宅で夜毎豪華なパーティを催す、謎の男ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)。
その隣に住んでいたシニカルな若者ニック(トビ―・マグワイヤー)の回想によって、物語は語られます。

大富豪ギャツビーは何処から来たのか?
どういう経歴なのか?
どうやって富を得たのか?
ドイツ皇帝の従兄弟だとか、ドイツのスパイだとか、 実は殺人犯ではないかなどと
噂が飛びかうが、誰一人真実を知らない。
知らないままに人々は着飾って、饗宴に群がってくる。
ティファニーの提供による煌めくジュエリー、
ブルックス・ブラザーズ、プラダなどによる豪華絢爛な衣装は眩いばかり。
夜毎繰り広げられる贅を極めた乱痴気騒ぎは、
すべて愛する一人の女性、デイジー(キャリー・マリガン)の気を引くためだった。
デイジーは語り手ニックの従妹であり、対岸に住む名家の人妻であった…

画面はため息が出るほどにゴージャスで美しい。
虚飾で塗り固めたギャツビーの、化けの皮が剥がれて行く様も面白い。
一途に思い詰めるギャツビーの愛と
あまりにもいい加減なデイジーの想いとの比較も興味深い。
しかし。
これでは単にお金をかけた愛憎不倫殺人劇じゃないの、と私は思ってしまう。

原作にあった果てしない空虚さ、喪失感。
手に入らない愛、引いてはそれを求める自分の純真さを慕う想い。
ギャツビーがニックに何度も言う「対岸の緑の光」。
それはデイジーの邸宅の光であり、
届きそうでどうしても彼の手に届かない、愛の象徴。
巨万の富を築いても否定できない、出自の貧しさと惨めさ。
そんなギャツビーの独白を聞き、彼の哀れな終末を見届けたニックの
胸に去来する切なさと哀しさ。
大恐慌前夜のアメリカの繁栄の空虚さと、思うようにいかない人生の空しさ。
そういったものが映像では描き切れていない。
ただのドロドロ不倫劇が、アメリカ文学の金字塔、フィッツジェラルドの最高傑作と
言われる筈がないじゃないのと思ってしまうのです。
ちょっと残念…

「グレートギャツビー」 http://www.gatsbymovie.jp/

追記:映画の中でギャツビーが「友よ」と呼びかける聞き慣れない英語、何だろう?と思ったのですが
"old sport"のようです。
"They can't get him, old sport→「捕まえられないんですよ、親友」
http://ejje.weblio.jp/sentence/content/%E5%8F%8B%E3%82%88/3
”old sport! ”→「君」 
http://ejje.weblio.jp/content/sport
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可愛い浅知恵

2013年06月16日 | 家庭
FBで見た動画。
キャリーは目が見えないダックスフント犬なのだそうです。
飼い主が寝る時に、部屋から出て行くように言うと
仰向けにひっくり返って、死んだふりをするのですと。
確かに転がったキャリー、顔と四肢はピクリともしない。
でも、その尻尾が激しく振られているのでバレバレ…
(たった30秒の動画なので是非ご覧ください)
可愛いなあ。

Blind Callie Pretends Not To Hear ... Except For That Tail


タロウもよくするのです。
例えばタロウの歯磨きをしようとすると
タロウ、そうっと歩いて部屋の隅に行き、
クッションに隠れたりする。
しかし、ご覧の通りバレバレ。



我家ではこれを、タロ知恵と呼んでいます。

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ヤドリギの下で

2013年06月15日 | 社会


FBのこの写真には「ヤドリギ」(mistletoe)という説明がありました。

ああ、これがそうだったのか。
イギリスやフランスでよく見ました。
緑で丸い形状のかたまりが、大きな樹のあちこちについている。
鳥の巣でもないし、なんだろう?と思っていたのです。

欧米の本や映画に散々出てくるのです。
ヤドリギの飾りの下にいる女性にはキスしてもよいとも言われているようで
”I'm just gonna keep on waiting underneath the mistletoe”
マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」にも歌われている。
ハリー・ポッターがチョウと初めてキスするシーンも
ヤドリギの飾りの下でした。
ハリーの初恋はその後、儚く消えてしまうのですが
あのシーンは初々しかったな…
私が映画などで見たヤドリギは、普通の小枝の束であることが多かったので
それが、樹にくっついているあの緑のまん丸状のものとは結び付かなかったのです。

Wikipediaの解説によると
ヤドリギは日本にもあるのですね。
知りませんでした。


イギリスのヤドリギ(Wikiより)

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息苦しくなる「別離」

2013年06月13日 | 映画


この作品、アカデミー賞外国語映画賞、ベルリン国際映画祭では史上初の主要3部門受賞、
ゴールデン・グローブ外国語映画賞と、2011年の映画賞を総舐めなのです。
期待して観たのですが…
2011年 イラン映画 アスガー・ファルハディ監督

物語は、イランのある夫婦の離婚調停のシーンから始まります。
11歳の娘の将来のため、外国に移住したいという妻シミン。
アルツハイマーの父親を置いて外国には行けないという銀行員の夫ナデル。
話はまとまらず、とりあえず妻は実家に帰る。
夫と娘は家に残り、老父の介護は家政婦を雇うことに。
この夫婦は綺麗なアパートメントに住み、それぞれが車を持ち、
イランではきっと、豊かな部類の家庭なのでしょう。
そこに通ってくることになった家政婦は、もっと下の階級の、敬虔なムスリム。
家政婦ラジエは幼い娘を連れて、失業中の夫ホジャットに内緒で働きに来ている。
ある事件が起こり、ナデル夫妻とホジャット夫妻が告訴し合うことに。



初っ端から、誰かが誰かを責め、不穏な空気が漂います。
夫婦はお互いをなじり、運搬人は賃金が安いと依頼人をなじり、
家政婦は条件が違うと雇い主をなじり、
その夫はオレに黙って働くとはと、妻をなじる。
しかし誰かが決定的に悪いというわけではなく、
保身の為についた小さな嘘が、或いは些細な意地の張り合いが
話をどんどん複雑に悪化させていく。
観ているのが息苦しくなるほどです。

アルツハイマーの老父を看護する筈の家政婦ラジエが勝手に外出し、
老父の容体は悪化する。
雇い主ナデルは怒って、帰って来たラジエを突き飛ばす。
その夜ラジエは流産し、夫ホジャットはナデルを告訴する。
ナデルもラジエを、病人を放置したかどで告訴する。
二組の夫婦対抗バトルも凄いが、夫婦間でのバトルも酷くなっていく。
このドロドロの話に救いはあるのか?
間に挟まれた、それぞれの無垢な娘がなんとも哀れなのです。

終盤に、意外な事実が発覚します。
ようやく話が解決するかと思いきや、そこに宗教が絡んで…
こういうシーンに直面すると、異文化の理解は本当に難しいと思う。
しかし同時に、アルツハイマーの介護問題、教育問題、離婚問題などは
国も文化も越えて何処も同じなのだと思うのです。
エンドロールが流れるラストシーン、離婚調停の裁判所らしきところで
ナデルとシミンの夫婦が画面の両端に分かれて座っている。
同じ文化、同じ階級に属していても
夫婦は目を合わせることもなく、言葉もなく、二人の間には大きな溝があるのです。
娘の涙も、それを埋めることはできなかった。

絡み合う伏線、綿密なプロットが、やり切れない人間関係をあざとく描き出す、
ある意味、非常に疲れる作品です。
最後まで観客を緊張させ、苛立たせるこの吸引力が、
これだけの映画賞獲得に至ったのでしょうか…

「別離」http://www.betsuri.com/
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夢中で読んだが…ウェイバック原作「脱出記」

2013年06月11日 | 


実話から作られたという映画「ウェイバック」、こんなことが本当にあったのか!?
どうにも気になって、原作をamazonで取り寄せてみました。
「脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち」
スラヴォミール・ラウイッツが口述し、ロナルド・ダウニングが著したという
1956年出版「The Long Walk」の、海津正彦による翻訳本。
「発刊から50年、いまなお読み継がれる冒険ノンフィクションの白眉、
世界25カ国で翻訳されている 」(amazon)ということですが…

映画と違う点はまず、ソ連警察による拷問の様子が克明に書かれているということ。
ポーランド陸軍騎兵隊中尉だった著者ラウイッツは1939年、ソ連当局にスパイ容疑で逮捕され、
カルコフ監獄で一年に渡って過酷な取り調べを受けるのです。
「キシュカ」という、立っているだけがやっとの煙突のような細長い独房に入れられ、
糞尿は垂れ流し状態(一度も掃除されなかったという)、ここに6カ月。
その後、ここに書くのも憚れるような様々な拷問を経て、
裁判の結果は「25年の強制労働」。
家畜列車にぎゅうぎゅうに押し込まれ(一車両に60人)
ここでも身動きできず、立ったまま排泄しながら3週間。
貨車から降ろされた後、2ヶ月に渡って鎖に繋がれながら雪の中を1500キロ歩き、
そうしてシベリアの第303収容所に着いたのでした。

ここからの脱出、そして逃亡の様子は、概ね映画と同じです。
映画の登場人物には多少、脚色が加えてありますが、
驚いたことに、17歳の少女との出会いとその死も、本当に出てくるのです。
少女が集団農場から逃げてきた経緯が映画では省略してありましたが
要するに性的虐待から逃れてきたらしい。
極寒のシベリア、灼熱のゴビ砂漠、厳冬期のチベット。
飢えと渇きと寒さと暑さに何度も死にかけながら、
実際に次々と仲間を亡くしながら、ひたすら南を目指して歩いて行く。
芋虫や蛇を食べながら、凍傷や脚気や日射病に苦しみながら
それでも人間性を失わず、仲間と励まし合いながら。
モンゴルの、或いはチベットの素朴な人々から受けた精一杯のもてなしが
映画では省略されていたのが残念です。
面白くて夢中で読み終わりましたが…

しかし、面白すぎて疑問が残る。
こんなことが本当にあり得るのか?
何の装備もなく、極寒のシベリアや灼熱のゴビ砂漠や厳冬期のヒマラヤを
踏破できるものなのか?
ネットで検索してみたら、やはりフィクション疑惑があるそうです。
最終的に著者ラウイッツを含めて4人が生き残ったのに、
他の生存者の証言がまるでないこと。
雪男との邂逅など、話ができすぎていること。
イギリスBBC放送のニュースによると
ラウイッツがインドにたどり着いたと主張している1942年に
ソ連の強制収容所から恩赦で釈放されたと自分で書いている記録もあるのだそうです。
"Rawicz's own hand described how he was released from the gulag in 1942, apparently as part of a general amnesty for Polish soldiers."
(BBCnews) http://news.bbc.co.uk/2/hi/6098218.stm

何が本当なのかは皆目分かりませんが
ラウイッツというポーランド人がソ連の強制収容所で耐えがたい経験をし、
その後イギリスで結婚して幸せな家庭を持ち、
体験談の講演活動をしながら祖国ポーランドの孤児院の運営を援助し、
2004年に88歳で亡くなったことは事実のようです。

「脱出記―シベリアからインドまで歩いた男たち」http://tinyurl.com/kzcbpoz
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