グリニッジ・ビレッジにあるビレッジ・バンガードは、1935年創業という古いジャズクラブです。
1935年創業、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン、マイルズ・デイビス、
チャールス・ミンガス、ビル・エバンスといったモダン・ジャズの巨人たちがここで演奏をおこない、
後年名盤と呼ばれるライブ・アルバムが数多くレコーディングされてきたと。
赤いドアを開けて地下に階段を下りて行くと
こじんまりした薄暗い空間が広がる。
壁には数々のジャズ・ジャイアンツの写真、ぎっしり並べられた小さな丸テーブルとイス。
青山ブルーノートのような豪華さ、きらびやかさはまったくないが
ステージと客席の境目がはっきりせず、つまり客席も一体となって演奏を楽しめるのです。
毎週月曜日に聴けるという、こちら専属のビッグバンド、バンガード・ジャズ・オーケストラの
ライブを、夫は楽しみにしていたのです。
1966年結成というこのバンドは、2009年にはグラミー賞も受賞しています。
ジャズに疎い私でさえ、もうすっかり体に馴染んでしまっている「ワルツ・フォー・デビー」や
「マイ・フーリッシュ・ハート」のあの名盤が、ここで録音されたのかと思うと
やはり感慨深いものが。
村上春樹は「ポートレイト・イン・ジャズ」の中で、この曲についてこう言っています。
「甘い曲、確かにそうだ。
しかしここまで肉体に食い込まれると、もう何も言えないというところはある。
世界に恋をするというのは、つまりそういうことではないか。」
春樹が若い頃、ジャズ喫茶を経営していたというのは周知の事実ですが
「意味がなければスイングはない」「ポートレイト・イン・ジャズ」などを読むと
彼がいかにジャズを愛しているかということがよく分かります。
私の無駄な感想よりも、彼の言葉をもう一つ。
「(ジャッキー&ロイの)このレコードを聴くたびに、これくらい洗練された技術的に
高度な音楽を、汗もかかずにすらすらと日常的に生み出してきたアメリカという土壌
(あるいはニューヨークと限定すべきだろうか?)に対して、またその特別な時代に
対して、僕はあらためて敬服してしまうことになる。」
「ポートレイト・イン・ジャズ」 http://tinyurl.com/prtjl88