北国アイスランドの灰色の冬景色の中で、話は始まります。
空港で荷物係をするフーシは、150㎏はあろうかという巨漢で童貞、頭頂部は剥げている。
43歳になっても団地に母親と住み、唯一の趣味は戦争のジオラマ。
小さなみすぼらしいキッチンで、朝から山盛りのシリアルを食べている。
職場ではいじめられ、からかわれる。
近所の女の子に懐かれて遊ぶと、幼児性愛者の疑いをかけられる。
フーシが帰宅すると、初老の母親が恋人と台所でイタしている所に遭遇してしまったりする。
いやもう、景色は寒々しいし、音楽は暗いし、美男美女は一人も出て来ないし、
暗澹とした思いで見て行くと…
43歳の孤独なオタクが恋をするのです。
それまで自分を押し殺して生きて来た男が、初めて自分の足で踏み出そうとする。
アタックの仕方も実に不器用でたどたどしく、
ワガママな女に振り回され放題で(彼女の精神的な病気のせいもあるのだけど)
イライラもするのですが、それでも頑張れ!と応援したくなる。
あのラストシーンには絶句しました。
ここで終わっちゃうの?と。
しかし考えてみれば、何十年と空港で働いているのに飛行機に乗ったことがなかった彼が
初めて乗った機内の窓から、自分の職場を眺めたのですよね。
それはやはり、彼にとっては大きな進歩であったのかも…
邦題はちょっと許せません。
原題は「Fusi」、英語名は「Virgin Mountain」童貞の大男と言ったような意味か。
公式HP http://www.magichour.co.jp/fusi/