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1作目「ビフォアサンライズ」 列車で出逢った男女がウィーンで途中下車、
恋に落ちてめくるめく一夜を過ごす。
2作目「ビフォアサンセット」その9年後、パリで出逢った二人。
結婚して子供もいる男と、男を思い続けていた女。
9年前の一夜が只の衝動だったのか、或いは運命だったのか、探り合い語り合い、
答えは出ないままに場面は終わる。
そこからまた9年目の本作。
二人は結婚して双子の女の子を設け、バカンスでギリシアに来ている。
バカンスの最終日、素敵な一夜を過ごそうと二人でホテルに泊まるが…
ロマンチックでワクワクした1作目、愛の行方を探してやはりドキドキした2作目に比べて
3作目のなんと現実的なこと!
そりゃそうでしょう、結婚とは即ち現実。
そこにあるのは生活。
ワクワクもドキドキも存在しない。
ジェシー(イーサン・ホーク)は人気作家となり、体型は変わらないものの、
くたびれた顔をしている。
セリーヌ(ジュリー・デルピー)はおなかにも腰にもたっぷり脂肪がつき、
完全にオバサン体型と化している。
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前2作と変わらないのは、相変わらず二人が喋りまくっていること。
2時間の間、ほぼ喋りっ放し。
しかしその内容たるや、ユーモアに満ちたやり取りもあるものの、
一つ間違うと生活の愚痴、過去の不満、相手への罵倒…
壮絶なものです。
ホテルの一夜も、最初は順調に始まるのですが
ベッドで事に及ぼうとしたその時に、ジェシーの前妻との間の息子から電話が入り、
滅茶苦茶に。
セリーヌの相手への責め方の、的確で見事なことといったら。
あまりにも上手すぎて、こんな女性と暮らすのは大変だろうと思えてくる。
しかしジェシーは過去に多分、後ろめたいことも色々しているものの、
そんなセリーヌを包み込み、それでも君が好きなんだという態勢を崩さない。
激昂したセリーヌをどうやって落ち着かせ丸めるか、中々の見ものです。
前2作とのあまりの違いに愕然としますが
それはつまり結婚前と結婚後のちがいでもある。
二人しか登場しなかった前2作に比べ、本作の登場人物の多いこと。
二人の友人夫婦、前妻、前妻との間の息子、親戚などがぞろぞろと。
でも結婚とはそういうものなんですよね。
二人だけの世界ではなくなり、ワクワクもドキドキもなくなり、
生活と係累の煩わしさがごっそりと付いてくる。
その夢と現実の違いをを見せつけたという意味では
本作は成功していると言えるか。
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しかし40代のセリーヌの体型の崩れ方には、ちょっとがっかり。
もっと綺麗に年を重ねている女性もいくらでもいるのに…
「ビフォアミッドナイト」http://beforemidnight-jp.com/