Zooey's Diary

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「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

2024年07月11日 | 映画

1970年の冬、ボストン郊外の全寮制ハイスクール、名門バートン校。
生真面目で皮肉屋で学生や同僚からも嫌われている教師ポールは、クリスマス休暇に家に帰れない学生たちの監督役を務めることに。母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになった学生アンガス。自分の息子をベトナム戦争で亡くしたばかりの、寄宿舎の食堂の料理長メアリー。
そんな3人が、2週間のクリスマス休暇を疑似家族のように過ごすことになる。
3人にはまるで共通点はなく、最初は反発心しかなかったが…

「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」の名匠アレクサンダー・ペイン監督の新作というので、期待していました。
全寮制の名門校を舞台にした映画「今を生きる」を思い出したという意見を散見しましたが、私はそれよりも「セント・オブ・ウーマン」を色濃く思い出しました。
東部名門大学に入学するための専門教育を行うPreparatory-School、そこの学生をプレッピーと呼ぶ。
彼らを取り上げた映画や小説に、今までどれだけ接して来たことか。
前述の映画に加えて「ライ麦畑でつかまえて」然り、「ある愛の歌」然り。
この学校に入って高額の寄付金を納めれば、名門大学への推薦枠を優先的に獲得出来る。その恩恵に浴する者もいれば、反抗してドロップアウトする者もいる。



アンガスは成績はよいが世の中を見下しており、みんなから嫌われている。
しかしその母親の自己本位ぶりには、言葉を失くしました。
帰省するつもりで荷物をスーツケースに詰め込んだアンガスに、休暇が始まったその朝に駄目だと連絡するとは。
あれではアンガスが反抗的になるのも無理はない。
彼は今まで5回の退学、転校を繰り返しており、このバートン校を辞めさせられると、州兵養成の為の陸軍学校に行くしかない。

そしてポール・ジアマッティ演じる、斜視で頑固で融通の利かない教師、ハナム。
まるで違う背景を持った料理長メアリー、この3人の不器用な接し方、少しずつ溶け合っていく様の描き方は見事なものでした。
ハナムがアンガスを退学させないために、最後ああしたことですべてを失ってしまったが、初めて人間らしい心を取り戻したと言えるのでしょう。



アメリカ東部の、雪の降りしきる中の煉瓦造りの名門校。
あちこちで挿入される、静かな讃美歌が美しい。
「ホールドオーバーズ」とは、残留者というような意味。
反発しあう残留者たちが、次第に心を通わせていく暖かい世界を堪能しましたが、できたらクリスマスの頃に観たかった…

公式HP 

コメント (2)
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